問題なのは、経済政策を決定する多くの政治家や経済分析を担当する学者、官庁エコノミストの頭の中が、20世紀の経済を引きずったままで、21世紀の経済にアップデートされていないということだ。

20世紀の経済で頭が凝り固まった政治的リーダーが強力であればあるほど、市場に混乱をもたらす。なぜなら21世紀の経済においては、20世紀の経済理論に基づいた施策はことごとく裏目・反対に出るという特徴があるからだ。

なぜ利下げで株価は下がるのか

たとえば、トランプ米大統領は減税と利下げで景気が良くなると信じている。しかし、需要のないところで減税をしても、あぶく銭が市場を肥満体にするだけで、実需がそれほど伸びるわけではない。むしろ、市場の随所にバブルが発生して、裸の王様だと気づいた瞬間に破裂する。

20世紀の経済原論は「利下げをしてマネタリーベースをジャブジャブにすると景気が良くなる。逆に利上げでマネタリーベースを引き締めると景気は悪くなる」だった。だから再選狙いで好景気を引っ張りたいトランプ大統領は、事あるたびにツイッターでFRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長に「金利を下げろ」と脅してきた。

しかし、今回の新型コロナウイルス禍で、FRBは20年3月3日に0.5%、20年3月15日に1.0%とトータル1.5%の緊急利下げに踏み切ったにもかかわらず、市場は「暴落」で反応した。その後、20年4月9日には、新型コロナ対策も含めて市場の沈静化のために2兆3000億ドル(約250兆円)の経済対策を打ち出したが、ニューヨーク市場は乱高下を繰り返して不安定な状況が続いている。3万ドルを窺っていた株価は、トランプの再選を危うくする2万ドルがキープできるかどうかの瀬戸際だ。

日本でも資産がGDP(国内総生産)と同じくらいに膨れ上がった日銀が、さらにETF(上場投資信託)の買い入れ枠を倍増(年間12兆円)して下支えに走っているが、株価の下落に歯止めはかからない。