松下さんの思いを理解することができるようになるそのメモを読み解けば、松下さんの考え、思想、哲学などが、頭ではなく、腹で理解できるようになります。仕事の指示も、なにをすべきか、松下さんの思いを理解することができるようになる。そういうことを繰り返していると、松下さんの考えとか、思想、哲学だけでなく、仕事の指示でさえ、頭ではなく、腹でわかるようになります。 メモをとる第一のメリットは、そういうことです。

メモをとり、清書し、読み返すことが大事

最近の学生は、授業のときに先生が黒板に書いた字を、ノートに書き写すのではなく、スマホのカメラで撮って済ませるそうですが、それでは頭に入らないのではないでしょうか。1つは、撮ったという安心感から、清書しない。だから、頭に入らない。1つは、書き写すときに、考えて読み解く必要がない。書き写すだけ。だから、頭に入らない。やはり、メモをとり、清書し、読み返すことが大事だと思います。

メモをとる、もう1つのメリットは、とったメモの内容がスケジュールであれば、読み返すことによって、次の準備、事前の準備をすることができるということです。社長や上司が1週間後や1カ月後に誰かに会うということであれば、どんな資料やデータを揃えればいいか、頭の中に浮かんできます。 目で聞いて、表情を見て、メモをとり、考え、判読しながら整理していますから、なにを準備したらいいか、わかります。社長や上司にとって安心して仕事を任せられるのは、指示する前に準備をしてくれる人です。メモをもとに、しっかりと準備ができる人は、社長や上司に安心感を与え、頼りがいがある存在です。

松下幸之助さんが亡くなってから、私はそのメモをもとに、何十冊も執筆しています。すべて松下さんから直接聞いた、折々の話のメモをもとにしています。人の話を聞いてメモをとるということは、その人について、後日文章にしたり、話をするときにも役立ちます。これがメモをとる3つ目のメリットです。もう2000回以上の講演をしていますが、その講演も、松下さんが話してくれたときの、私のメモをもとにしています。本や雑誌に原稿を書いてくれと頼まれたときも、手元にかなりのメモがありますから、大抵は、すぐに書くことができますね。ですから、私は原稿の締め切りに遅れたことは1度もありません。

もちろん、今でもメモをとることを心掛けています。やっている方もいらっしゃると思いますが、枕元にノートと鉛筆を置いてますよ。夜中でも、ハッとなにかを思いついたら、メモをとる。最近では、スマホの手書きメモ機能も使って、いつでもどこでも思いついたことを書き留めています。

メモ術は早い話が、成功術。そのように、私は思っています。

(構成=大越 裕)
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