考えていることを伝え、理解させなければいけない
たとえば人事評価でも、日本人の自己評価は、「ちょっとできませんでした」と、やや低めに出してくるのを上司が「いやいや、おまえはもっとやったよ」と引き上げることが多いのですが、海外の人の自己評価は、「私は120%やりました」というところから、上司は「いやいや、そうは言うけれど、あなた、ここはできませんでしたよね?」と下げることのほうが多い。まるで逆のプロセスです。
人事評価でも企業同士のM&Aでも、交渉は、ロジカルに伝えられないと、相手は納得しません。なぜダメなのか? どうすべきなのか? リーダーとして考えていることを伝え、理解させなければいけない。そのためには、数字も必要ですし、論理も必要。ロジックが構築できていないと、議論になりませんし、反論もできません。押してくる相手を、どういなしながら押し返して交渉のベースにのせるか。これには、結構な胆力がいるわけです。
胆力を育むのは、やはり経験だと思います。いろんな経験をするには、好奇心を持ってさまざまなことに触れたいと自ら感じることがベースになります。イギリス時代には、仕事だけではなく、ゴルフや釣りなどプライベートなコミュニティにも参加し、交流を深めていました。さまざまな意見を持った人と話をするというのは、人間力を上げていくうえで大事なことですね。
(構成=遠藤 成 撮影=大槻純一)