今、巨大国際都市・東京は新たなチャレンジステージを迎えている。「コンパクトシティーの集合体」である東京都心部では現在も25を超える大規模再開発プロジェクトが同時進行中だ。道路、鉄道、空港、港湾など交通アクセスの整備も休みなく続く。森記念財団都市戦略研究所所長で東洋大学教授の竹中平蔵氏に、知識集約型産業の一大拠点として飛躍する東京の魅力とポテンシャル、「次の10年」を見据えた課題を聞いた。

休みなく続く大規模開発と交通アクセス整備

私が所長を務める森記念財団都市戦略研究所の「都市総合力ランキング2019」では、東京は3年連続でロンドン、ニューヨークに次ぐ第3位にランクされた。東京は突出した強みはないものの、経済、文化、居住環境のどれも評価が高く、魅力あふれた巨大都市を形成している。私は年間10~15回ほど海外出張するが、帰国する度にホッとする。東京圏は人口約3,600万人の世界最大の集積を誇る巨大都市でありながら、高度な通勤ネットワークが整備され、空気がきれいで、水もおいしい。こんな大都市は世界のどこにもない。

都市機能の面で見た東京の最大の特色は「コンパクトシティーが連なってできている」ことだ。今、日本橋、八重洲、丸の内、大手町、虎ノ門、神谷町などの都心部では、大手デベロッパーが主導する大規模再開発プロジェクトが進行している。それら個性的で最新の機能・環境を備えたコンパクトシティーが競い合い、さらにそれぞれの周辺では中規模なオフィスビル、マンションの建設が進む。

慶應義塾大学名誉教授
東洋大学教授
竹中 平蔵氏
[たけなか へいぞう]1951年生まれ。慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授。博士(経済学)。一橋大学卒業。ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを経て01年、小泉内閣の経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、総務大臣などを歴任。現在、公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、アカデミーヒルズ理事長、(株)パソナグループ取締役会長、オリックス(株)社外取締役、SBIホールディングス(株)社外取締役、世界経済フォーラム(ダボス会議)理事などを兼職。

今後もこの動きは止まらない。現在、約25もの再開発プロジェクトが動いている。上記のほかにも、渋谷、浜松町、品川・高輪周辺など大型事業が目白押しだ。

交通アクセスの整備も加速している。羽田空港では発着枠の拡大に合わせて、空港直結の大型ホテル・コンベンション施設の建設が進んでいる。都心からわずか19キロ、20分で行けるという世界でもまれな好立地を活かし、アジアのハブ空港として飛躍することが期待される。道路網では環状2号線、東京外環道、「海の森トンネル」などが次々と開通。鉄道網についてもJR・私鉄・地下鉄の相互乗り入れや新駅の開設など整備が続く。

東京では「1つの再開発が次の開発を誘発する」という好循環が生まれている。その代表例が高輪ゲートウェイ駅の新設だ。東京の北と西をつなぐ「上野東京ライン」が開通したことによって以前は2つあった車両基地が1つで済むことになり、品川地区の再開発が実現したのだ。

2020年春に暫定開業予定の高輪ゲートウェイ駅

2027年にはいよいよ、その品川駅を起点とするリニア新幹線が開業する。それによってどんな変化が起きるか。超巨大な集積を有する「メガリージョン」が出現することになる。名古屋に直結し、さらに大阪まで延伸すると、沿線人口は7,000万人を超える。商圏が広がることで期待できる経済効果は計り知れない。

 

知識集約型産業が集積する東京のポテンシャル

私たちは今、第4次産業革命の真っ只中にいる。その主役は知識集約型産業だ。旧来のモノ作り産業とは異なり、知識集約型産業は人と人、企業と企業といった「多様な知識・知見の組み合わせ」によって付加価値を創造していく。人口7,000万人の集積が人工知能(AI)、ロボット、5Gなど最新のテクノロジーと結びついたとき、東京は世界に類のない「スーパースマートシティー」に生まれ変わる。

最新テクノロジーで東京はスーパースマートシティーへ

さらに東京にはもう1つ、知識集約型産業を育む大きなポテンシャルがある。それはカルチャーの豊かさだ。カルチャーは知識集約型産業の源泉であるクリエイティビティーを刺激する。例えば食文化。東京にはミシュランの星付きレストランが本家パリよりも多い。歴史と伝統を誇るアートも充実し、海外からの旅行客を含め、多くの人々が「東京は面白い!」と称賛する。

けれども海外企業の誘致に関しては人気がない。それはなぜか。私は「3つの弱点を克服できれば、東京は世界一の都市になれる」と言い続けている。弱点とは税率の高さ、規制の多さ、交通アクセスだ。交通アクセスは大きく改善したが、問題は税制と規制だ。デモが続く香港から資本と人材の流出が始まっているが、行き先は東京ではなく、シンガポールだ。その理由は法人税と所得税が格段に安いから。また、規制の多さもライドシェアや民泊、5Gを活用した遠隔医療・教育の普及を妨げている。税制と規制の改革が進めば、東京はさらに魅力的な都市になる。

都心部の「利用価値のある不動産」の価値は今後さらに増していくだろう。ただ、その使い方は変わっていく。良い例がニューヨークにある。ネット通販の台頭でイーストリバー沿いの古い商業地区が衰退した。といって、人々が逃げ出したわけではない。新たにコワーキングスペースが生まれ、若い起業家を呼び込んでいる。ボルテックスの調査によると、100年以上続く東京の長寿企業は不動産賃貸業で収益を上げているという。商家の店がオフィスビルに姿を変え、新たな付加価値を生み続けているのだ。

これからの時代を切り開くキーワードは3つある。すなわち、「スマート」「サスティナブル」「インクルーシブ」だ。最新テクノロジーを活用して環境・エネルギー面の負荷の小さい持続的な都市体系を構築し、地方の人も含めて皆が利益を共有し、生き生きと活躍する社会を創る――東京がそんな未来先取り社会を牽引し、世界一の都市となることを、私は確信している。(談)