2019年5月、山葵沢地熱発電所(秋田県湯沢市)が運転を開始した。Jパワー(電源開発)が50%出資する湯沢地熱株式会社が運営(三菱マテリアル、三菱ガス化学との共同事業)。発電所の立地は標高870mで、冬季は気温マイナス10℃以下、積雪4m超になることもある。この地上の寒さとは対照的な、280~300℃にも達する地熱の力が有効活用されているのだ。晩秋の山葵沢地熱発電所を、石原良純さんが訪ねた。
山葵沢発電所全景

「発電所を目指すクルマが、ひときわ勾配のきつい山道を登り始めると、木々の間に配管が敷かれていました。間もなく到着。水蒸気は印象的ですが、クルマを降りて聞こえるのは風の音。意外に静かでしたが、タービン棟に入ると初めて力強い音が腹に響き、出力およそ4.6万kWの迫力を実感しましたね」

と施設を一巡りして感想を語る石原良純さん。この出力でおよそ9万世帯の電力を賄う。出力1万kW以上の大型地熱発電所が日本で実現したのは、23年ぶりのことだ。

石原良純(いしはら・よしずみ)
1962年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。84年、俳優デビュー。97年、気象予報士に。現在、多くのテレビ番組ほか、さまざまなメディアで活躍中。

「300℃近くにもなる地熱のエネルギー。それを今後何十年も活用でき、多くの人々の役に立つとのこと。山の地中深くに眠っていた、これほどの力を発見し、電力に変えるには高い技術が必要でしょう」

地下1500m以上掘削した生産井から高温の地熱流体(マグマで熱せられた高温・高圧の地下水)を取り出し、その蒸気でタービンを回すのが、地熱発電の基本的な仕組みだ。

「さらに、ここでは蒸気を分離した後の熱水も減圧し蒸気化して使うダブルフラッシュ方式を導入。日本ではまだ3例目のこの方式で出力が10~15%高まったそうですね。技術の力で自然エネルギーを最大限に有効活用する。これぞエコロジーです」

タービンを回した後の蒸気は復水器内の冷却水で冷やされ凝縮水となり、冷却塔で冷却水として再利用。余った冷却水や蒸気と分離した熱水は還元井を通じて地中へ戻す。大量の地熱流体を取り出すことで、地下の深部に影響が生じるのを防ぐ目的もある。とはいえ生産井に近い地中に戻せば、地熱流体の温度が下がりかねないため、ここでは還元井を生産井から約2km離し、戻すべき水を配管で送る。

「そういえば冷却塔のそばで、少し硫黄の臭いがしたな。クルマから見えた配管の正体もわかった。おもしろいなあ」

タービン棟で、湯沢地熱(株)の大樂良二社長から発電の仕組みなどについて説明を受ける。
発電後の還元熱水を輸送する配管。全長は約2.4kmに及ぶ。

エコロジーは科学する気持ちから

石原さんが山葵沢を訪ねたのは、紅葉のピークを少し過ぎた時期だ。

「それでも僕にとっては、今年一番の紅葉でした。あの美しい山から電力が生まれていると思うと感心します。ただ地熱発電が可能な土地は、周辺には温泉郷があることも多い。自然との共生も大切で、山葵沢では温泉に変化が起こらないか、事前調査も入念だったと聞きました」

山葵沢地熱発電所の建設工事は希少動植物の保護のほか、工事車両や工事に伴う排水の環境影響などにも配慮。適切な対策をとって進められた。

山葵沢に続いて、Jパワーは同じく東北地域の新たな2カ所でも、地熱発電所を建設中および計画中だ。

「日本の気候はこまやかで複雑です。今日見た紅葉が象徴するとおり四季もある。ただその分、気象条件に左右される太陽光や風力での発電は不安定になりうる。その観点に立てば、地熱は優等生。再生可能エネルギーにも多様化とベストミックスが不可欠でしょう」

その安定性の高さから、地熱発電は再生可能エネルギーの中でもベースロード電源に位置付けられる。 Jパワーはその強みを生かし事業を推進している。

「節電して電力需要を抑えることも大切で、その意識は着実に広がっています。昔と違って今の子どもは結構ちゃんと電気を消すもんね。ただ、生きていくのに電力は欠かせない。同時に供給、つまり発電に意識を向けることも大切なんですね」

どんな技術も万能ではない。地熱発電にも課題がある一方で、さらなる可能性もある。それらがイノベーションで実現されていくのを消費者の側が注視していくことは重要だ。

「僕は、エコロジーとかサステナビリティって、一人一人が暮らしの中のいろんなことを科学する気持ちにかかっていると思っています。だから、自然環境と共生し、高効率な山葵沢地熱発電所に注目するのは大事なこと。これを含め、Jパワーがさまざまな取り組みで、より本格的な再生可能エネルギーの時代をリードしていくことに期待しています」

2025年度までに再生可能エネルギーの新規開発100万kW規模を目指す

Jパワーは、1952年の設立以来、大規模な水力・火力発電所のほか、風力、地熱、バイオマスなど多様な事業を展開。なかでも、現在、再生可能エネルギーの開発に力を入れており、2025年度までに100万kW規模の新規開発(2017年度比)を目指している。

地熱発電では40年以上の運転実績を持つほか、2019年には北海道や長崎県の沖合で洋上風力発電所の開発可能性を検討するなど、新たな取り組みにも挑戦している。

低炭素社会への要請が強まる中、Jパワーの蓄積してきた技術やノウハウが今後どのような形で貢献するのか。これからに注目だ。

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