38年ぶりとなったローマ教皇の日本訪問。82歳のフランシスコ教皇は日本滞在中、8回のスピーチを行った。コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「教皇は世界中で問題になっている心の貧困を、『ゾンビ化』といった。これは不安な時代を生きる日本人にずしりと響いたはずだ」という——。

82歳のフランシスコ教皇が日本人に伝えたかったこと

38年ぶりとなったローマ教皇の日本訪問。82歳のフランシスコ教皇は11月23日に来日し、4日間の滞在中に各地を精力的に回り、多くの日本人と触れ合い、その心に温かな印象を残した。

写真=時事通信フォト
東京カテドラル聖マリア大聖堂で行われた「青年との集い」で講話するフランシスコ・ローマ教皇=2019年11月25日、東京都文京区

同教皇は初の南米出身で、権威をかさに着ることのない気さくな人柄や、常に「弱者」を思いやる視点に立ち、多様性や寛容性を説く姿勢で知られる。ツイッターやインスタグラムを駆使し、トランプ米大統領によるメキシコとの国境における壁の建設計画を批判したり、異教徒との対話を促進したりするなど、強い発信力と行動力を持つ改革派のリーダーだ。

16世紀に日本に布教にやってきたフランシスコ・ザビエルが創設メンバーとなったイエズス会出身の初の教皇であり、そのゆかりの地への運命的な訪問となったわけだが、広島や長崎、東京など各地で8つのスピーチを行い、歴史に足跡を刻んだ。