警視庁には、東京都内の歓楽街を中心に風俗営業を取り締まる「風俗警察」がいる。彼らの捜査対象は風俗店やチケット転売、個人のわいせつ行為までさまざまだ。風俗警察が摘発した事件の一部を紹介しよう——。(前編、全2回)

※本稿は、今井良『風俗警察』(角川新書)の一部を再編集したものです。

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風俗警察の精鋭が集まる「セイトクタイ」

風俗警察には盛り場を監視する機動部隊が存在する。警視庁生活安全部・生活安全特別捜査隊の略称は警視庁内では「セイトクタイ」と呼ばれている。警視庁の執行隊でもある生特隊は、警視庁保安課=風俗警察の機動捜査部隊である。文京区内にある警視庁富坂庁舎に本部拠点を構えている。警視庁幹部が説明する。

「生特隊は元々、ダフ屋行為を取り締まるのが専門の捜査部隊だった。しかし現在は生活安全部の所管業務ならほぼ何でもやる。とりわけ風俗警察である保安課の捜査支援が重要な任務になっている。とにかく間口が広く機動性に優れている。精鋭ぞろいだ」

ちなみに執行隊とは、警視庁本部所属と所轄警察署の中間に位置付けられている。他部署で言えば、刑事部の機動捜査隊、警備部の機動隊、公安部の公安機動捜査隊、組織犯罪対策部の組織犯罪対策特別捜査隊、交通部の交通機動隊、地域部の自動車警ら隊などがある。

特隊は警視である隊長を筆頭に、2人の副隊長(警視級の管理官)が補佐。24の捜査班がある100人態勢の組織だ。

警視庁生特隊の手掛ける事件は実に幅広い。順を追って見ていこう。

池袋のハプニングバーを摘発

「警察だ! そのまま! 動くなよ!」

薄暗く狭い店内に突如怒号がこだまし、客に扮していた捜査員が一斉に立ち上がる。2006年11月に生特隊は東京都豊島区池袋のハプニングバーを摘発。公然わいせつの現行犯で航空自衛隊入間基地所属の二曹(30歳)ら客の男女7人を、同ほう助の現行犯で経営者の男(63歳)を逮捕した。

ハプニングバーは客同士がわいせつ行為を見せ合うことなどを売り物にした飲食店だ。摘発された店は会員制で、逮捕された客には私立大学職員も含まれていた。2001年ごろから営業を開始し年間約2000万円の売り上げがあったという。経営者は「人件費がかからないと思って始めた」と供述。二曹は「ホームページを見て知った」と容疑を認めていた。

「大人の遠足」と称し、バス内でわいせつ行為

2009年6月。あるマイクロバスを生特隊の捜査車両3台がマークしていた。

「絶対やっているはずだ」

座席の部分は全てカーテンで覆われている。捜査員はこのバス内でわいせつ行為が行われている可能性が極めて高いと考えていた。後日、同乗者から証言が得られ、最終的には立件にこぎつけた事件だった。

関越道を走行中の貸し切りバス車内でわいせつ行為をしたとして、公然わいせつの疑いで、音楽関係会社経営で放送作家の男(54歳)と知人の女(37歳)を逮捕した。また男らのわいせつ行為を手助けしたとして、同ほう助の疑いでハプニングバー経営の男(47歳)ら2人も逮捕した。