ある消費財メーカーの研修で出題された問題

また、今回の法改正で強化された取引先とのセクハラ問題にも目を尖らせている。消費財メーカーでは社員研修で以下のような質問を出している。

Y社のAさんは、自分が特別の好意を持っていない取引先のX社の異性の担当者Bさんから、個人的にプレゼントをもらったり、2人で食事に行かないかと誘われ、何度もBさんにごちそうになっている。Aさんの行動は仕事上の人間関係として問題がありますか?

あなたなら「問題あり」「問題なし」のいずれだろうか。回答は「問題あり」だ。法務担当役員はこう語る。

「つまり好意のない人からプレゼントや食事をごちそうになるのは、あらぬ誤解を生みやすくトラブルの原因になる可能性があるからです。本当は規則に書きたいところですが、実際に得意先の社員と結婚したケースもあり、判断が難しいグレーゾーンなので、マナーとしてよくないと口頭で指導しています」

食事の断り方も具体的に指導する

しかし、商品を売りたい営業職の女性社員が、相手企業のバイヤーから「飲みに行きませんか」と熱心に誘われたらなかなか断りづらいものだ。その場合はどうするのか。

「“社内規程”で取引先との1対1の食事は禁止されているんです。今度私の上司と一緒に行きませんか、と話すなどうまくやりなさいと言っています。そして上司と一緒に行く場合はこちらが接待するようにと。向こうにごちそうになると何かの便宜供与などと、あらぬ疑いをかけられる可能性もありますから」(法務担当役員)

実際には「社内規程」はないが、断るための方便として使っている。だが、今回の法改正でセクハラに関して他社からの事実確認の協力要請に応じることが盛り込まれた。これを機に「原則として取引先等の役員・社員との1対1の食事禁止」を明文化する企業も出てくる可能性もある。

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