とある大手医療機器メーカーの処分実例

セクハラなどハラスメントに対する企業の姿勢は年々厳しくなっている。セクハラ禁止規定を就業規則に盛り込んでいる企業は多い。罰則には懲戒解雇、諭旨解雇、降格、出勤停止、減給、譴責などがある。大企業の場合、内部の相談窓口で通報を受けたら、担当部局がまず被害者と面談し、事情を聞く。その次に職場の同僚などセクハラの事実を知る人がいればヒアリングし、最後に加害者に事実を確認する。

事実と確認されると相応の処分を受ける。大手医療機器メーカーの人事担当役員は処分事例についてこう語る。

「社内の男性社員からことあるごとに食事に行こうと誘われ、終業時間後も玄関で待ち伏せされているという女性社員の通報がありました。しつこくつきまとっていることは他の社員から裏付けが取れたので本人に問い質しました。彼が言うには、女性社員とは以前につきあっていたことがあるそうです。その後振られたのですが、彼としてはまだ自分に好意を持っていると誤解し、つきまとっていたそうです。女性が通報したことに彼自身も驚き『二度としません』と反省していました。初犯だし、情状酌量の余地もあると思いますが、罰則として減給処分にして部署を異動させました」

同社はセクハラなどの就業規則違反があれば、イントラネット上で個人名を隠し、所属部門と罪状・処分内容を一定期間掲示しているという。啓発活動と、ハラスメントは許さないという社員に向けた注意喚起の意味がある。

セクハラ研修も強化

大手消費財メーカーの法務担当役員は、セクハラなどハラスメントに関しては以前にも増して厳しく臨んでいると語る。

「今では新卒採用の4割が女性ですし、以前よりも女性社員が増えていますのでセクハラ教育は必須となっています。もちろん就業規則や行動規範などを使って教育していますが、より徹底させるために研修でもセクハラについて指導しています。研修では明文化して禁止はできない事項についても触れます。たとえば男性上司と部下の女性の1対1の社内での面談は許されるが、社外での1対1の食事には行かないこと。行くなら3~4人など複数で行くようにと指導しています」

1対1での食事は、セクハラトラブルが発生した場合に、「言った」「言わない」など事実確認が難しいこと、「とくに男性上司は酒が入ると口説き口調になりやすい」(別の小売業の人事部長)といった理由からである。