消費者の「障壁を取り除く」ための工夫

マーケティングや商品開発の現場では、「消費者の障壁を取り除く」にはどうすればいいか議論が交わされます。「障壁」ではなく「心理的抵抗」を使う現場もあります。

例えば、簡単に食事をしようと「レトルトカレー」や「袋麺」を作ろうとした場合。この時、容器包装の切り口が使いにくく、中身が取り出しにくいと消費者はストレスを感じます。時には、その商品へのイメージが悪化しかねません。そうした「障壁」「心理的抵抗」を和らげるために、容器メーカーや包装メーカーは、使い勝手を追求しています。

この視点で考えると、「とんかつでカロリー表示をしない」ことや「野菜たっぷり」という手法は、「がっつり食べたい」(でも周囲の目が何となく気になる)女性消費者の障壁を取り除いているのです。送り手側は、そこまで意識していないかもしれませんが。

外食しながら学ぶ消費者心理

筆者は「カフェ」に関する著作物も多く、時々「なぜカフェをテーマにしているのか?」と聞かれます。この時「小銭で利用できるカフェは、消費者心理の象徴だと思っている」と答えます。高級店を除けば“ワンコイン(500円玉)”で済むので、「その時の気分で店を選びやすい」のです。

これをもう少し発展させると「外食産業=幸せ産業」だと思っています。家族や恋人、友人・知人と飲食店で楽しく過ごす時間は、平和や平穏でなければできない行為。だからこそ消費者の本音が表れると思います。

最近は「おひとりさま」として、1人で飲食店を利用する人も増えました。冒頭の寿司店で、カウンターデビューをした20代女性の行動からも、「1人のほうが、好きなものを頼めて気がラク」「せっかくならカウンターで、職人さんが寿司を握るのを見たい」など、さまざまな消費者心理が考えられます。

“幸せ産業”の外食には、消費者の本音が表れやすいのです。今度外食するとき、消費者心理を分析する目をもって店に入ってみませんか。面白いことが見えるかもしれません。

高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

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