父、母、妹、家族3人が、バラバラの施設へ入院

認知症が見え隠れする母と、車椅子が手離せない父と同居していた肝心の妹が、あと3カ月の命……。介護する側が最も介護が必要な状態となり、私は気が動転しました。有無を言わさず、妹は即入院。頭いっぱいに広がってしまった脳腫瘍は、いつ状態が急変するかわかりません。

ケアマネージャーが自宅に駆け付け緊急家族会議です。時間がありません。

「お父さんとお母さんは、症状が異なるので一緒の施設には入れません。」
「ええっ? 3人バラバラの施設に入るのですか?」
「それしか、方法はありません」
「……。」

彼女は、知りうる限りの施設あちこちに電話をしてくれますが、どこの施設も数カ月待ちの状態です。父は、以前入所していた医療法人の空いている部屋に何とか預かってもらえることになりましたが、認知症が始まっていた母は、引き取り先がありません。10件以上の施設に電話をかけ、やっと見つかったのは短期間預かってくれるショートステイでした。

妹の入院の支度をし、父の支度をして施設に送り込み、母をショートステイ先に連れていくと、母が突然怒り出しました。

「何、ここはどこなの? 姥捨て山? 知らない人ばかり。イヤよ、こんなところ」。

嫌がる母に申し訳ないと思いながらも無理やり送り込んで、やっと妹の看病に駆け付けます。妹の状態が落ち着くまでの約2週間、地獄のような日々でした。仕事にもまともに手が付けられず、スタッフに頼んで対応していました。

この時まで思いもよらなかったのは、介護が必要になった両親がともに同じ施設に入れるとは限らないということ。症状や介護度によって、入所可否が分かれるのです。緊急の場合はショートステイで乗り切りますが、割高なので各施設の費用は確認が必要。仕事と介護を両立させようとするなら、様々な施設や外部サービスを徹底的に調べつくすこと。これに尽きると今もって思います。

反対を押し切って父と母を同じ施設へ

妹は大病院の脳外科に入院していましたが、苦しさのあまり何度もナースコールを鳴らして夜勤の看護師さんたちを困らせました。痛み止めで眠りを誘う強い薬を処方されることが多くなり、かわいそうで見ていられません。緩和ケア施設(死を迎えるためのケア施設)も考えましたが、ケアマネージャーの勧めで、小規模多機能居宅介護施設に移ることになりました。

一方、バラバラになってしまった父と母を一緒の施設に入れようとすると、ケアマネージャーは心配顔で「お母さんと一緒だと、お父さんがかわいそう」と言います。認知症の始まった母と同じ施設では、体は弱って介護が必要でも、意識がはっきりしている父には、我慢ならない対応をされるからというケアマネージャーの助言を振り切って、二人を母の状態に合わせた施設に入れることを選択した私は、後で、大きく後悔することになります。