「歯科業界では他の歯科医が行った治療を批判しない」。これまで歯科医療関係者を100人以上取材してきた岩澤倫彦ジャーナリストが受けたくない治療を語る。

銀歯▼歯を失う「負の連鎖」と手抜き治療にご用心

虫歯治療といえば、歯を削った部分(窩洞)を銀歯にするのが主流だった。1960年代から80年代にかけて、虫歯患者が爆発的に増えた時期を「虫歯の洪水時代」と呼ぶ。

この当時、大量に行われた銀歯の治療が、歯を失う「負の連鎖」を引き起こしていることは、ご存じだろうか?

現在、初期の虫歯は「再石灰化」によって回復することがわかっている。しかし、かつては早期治療と称して、大きく削って銀歯にするのが一般的だった。これによって「再石灰化」のチャンスを失っていたのだ。

さらに、銀歯を装着するために、虫歯が小さくても健康な部分も削って大きく拡げていた。小さい銀歯は、外れやすいからである。

加えて、歯ブラシが届きにくい部分を削って、銀歯に置き換えていた。「予防拡大」という100年以上前に確立された、虫歯治療の基本原則による教えがあったからだ。

いわば「転ばぬ先の杖」だが、現在では「余計なお世話」だったことがわかっている。歯を大きく削ることが、歯の寿命を縮めていたからだ。

銀歯を固着するセメントも、大きな問題となっている。経年劣化したセメントが溶けて隙間ができ、そこにプラークが侵入して、虫歯の再発原因になっているのだ。

再発した虫歯が進行すると、歯の中心部に通る歯髄(神経や血管)にまで感染が及び、「歯髄炎」が起きる。これは強い痛みを伴う。そして重度の「歯髄炎」になると、歯髄を抜かざるをえない。

また、歯根の先端にも感染が起きると、膿が溜まる「根尖病変」となる。こうした銀歯による「負の連鎖」で、歯が失われているのだ。

小さすぎる銀歯。(写真は『やってはいけない歯科治療』より)

銀歯の「手抜き治療」も横行していた。X線画像のように、歯の形状に合っていない銀歯が多いのだ。当然、虫歯の再発リスクは高い。

銀歯の問題は、歯科医の間で周知の事実だったが、患者に伝えられることはなかった。歯科業界には「他の歯科医が行った治療を批判しない」という不文律が存在しているからだ。

手抜き治療を見つけて、指摘や告発した歯科医が、地域の歯科医師会などに組織ぐるみで圧力をかけられたケースも聞いた。

レジン▼虫歯以外は削らずにすむ合理的な治療法

日本で銀歯が主流だった頃、コンポジット・レジン修復という虫歯治療が開発された。レジンはプラスチック系素材で、歯の色に近いペースト状になっている。

虫歯部分だけを削った後、レジンを充填して光を当て固める。ただし、虫歯の範囲が大きいとレジンが使えない場合もある。

2002年、国際歯科連盟はミニマル・インターベーション(歯に対する最小限の侵襲)という概念を提唱した。これを具現化した虫歯治療が、レジンだった。当時からスウェーデンなどはレジンが主流だったが、日本は銀歯に固執していたのだ。