桜田義孝五輪相がついに辞任した。辞任の直接の理由ではないが、今年2月、競泳の池江璃花子選手が白血病を公表したときには「がっかりしている」とも述べていた。「がんになった」と打ち明けられたら、どう答えればいいのか。37歳のときに乳がんと診断され、現在はがん患者の就労を支援している桜井なおみ氏が、自らの経験から語る――。

※本稿は、桜井なおみ『あのひとががんになったら「通院治療」時代のつながり方』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

およそ2人に1人が「がん」になる

一生のうちにがんになる確率は、現在「2人に1人」と言われています。

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(更新・確認日:2019年1月21日)の推計によれば、新たに「がん」と診断された人は、2014年の1年間だけで約86万人。男性が約50万人、女性が約37万人いらっしゃいました。がん統計によれば、一生のうちに男性が罹患する確率は62%、女性は47%とされています。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kieferpix)

おおよそ2人に1人となれば、とても身近な病気です。それでも、がんになった人は「どうして私が?」と思い、がんになっていない人は「私は大丈夫」と思っているのではないでしょうか。

30代でがん患者となった私も、がんという診断を受ける前までは、まさか自分ががんになるなんて思ってもいませんでした。インフルエンザにさえかかったことはなく、健康には自信があったのです。大病と言えば、骨折くらいで、病院で1万円札を何枚も払うような治療を受けたことはありませんでした。

おまけに、がん保険にも入っていなかったので、診断を受けてから、1万円札がどんどん消えていく状況に「この先どれだけお金がかかるのか」と不安でいっぱいになりました。がんになる前にもう少し「もしもがんになったら」を想定していれば……と思いましたが、まさに後の祭りです。

命の大切さに比べたら「たったの3時間」

ここで、私はどうやってがんを見つけたのか、少し振り返らせてください。私の場合、職場の健康診断で見つけることができました。

当時、私が勤めていた会社では、一般健診は年に1回あり、内容は身長や体重、視力、聴力のほか、心電図や肺のX線写真、胃のバリウム検査、便潜血検査、尿検査、血液検査でした。オプションでがん検診があり、女性は、子宮がん検診は20歳から、乳がん検診は35歳から受けられました。

ところが、この2つのがん検診は、一般健診のあと、午後の時間に行われることが多く、受診するにはすべての検査を終えてから2、3時間病院で待たなければいけなかったのです。たったの3時間ですが、忙しい時期に待ちぼうけの3時間を捻出するのはとても大変でした。

というのも、待ち時間自体は3時間でも、午後にかかってしまうため、結局会社に戻れるのは午後3時頃。ほぼ丸一日が潰れてしまうのです。

いまから考えれば、命の大切さに比べたら「たったの3時間」なのですが、「健康だ」と思っている仕事人間にとって、3時間の待ちぼうけは「面倒くさい」「もったいない」という感覚でした。