オランダなどは、生きている間にはたった1点しか作品が売れなかったヴァン・ゴッホが、20世紀美術の大巨匠となっていて、アムステルダムの国立ゴッホ美術館を目指して、世界中から何百万人もの人がやってくるのですから。国が後押しするシステムを作れば、必ず国家の資産を増やすことになります。

いみじくも、中国の現代アートがお手本のように実践した「ヴェネチアで見せ、バーゼルで売る」というアート戦略は、欧米では当たり前にやられている方法です。ヴェネチアでは作品は売っていません。ヴェネチアビエンナーレというのはあくまでショーケースなのです。ですから、ヴェネチアビエンナーレに世界中の大富豪や美術館購入の決定権を持っているキュレーターなどが集まる時に、日本館で見た作品が買える場所を作っておくことが重要なのです。

≪YUKA≫ 2000年 作家蔵 ©Yanagi Miwa
写真を拡大
≪YUKA≫ 2000年 作家蔵 ©Yanagi Miwa

今年の6月7日から11月22日まで開催される第53回ヴェネチアビエンナーレの日本館代表はやなぎみわさんで、モデルとなる女性の50年後を空想してもらいその姿に変身するシリーズやガルシア・マルケスの短編にインスパイアされた少女と老女が登場するシリーズなどですでに世界的に知られています。彼女の場合は海外の美術館の展示などの経験も豊富で、作品を扱う海外のギャラリーがアートバーゼルにブースを出すそうなので、チャンスを生かしてなお一層の活躍を期待したいものです(やなぎみわ展が東京都写真美術館で現在開催中)。

中国人アーティストがヴェネチアビエンナーレデビューを果たした99年には、日本のミュージシャン、ピチカートファイブが北欧館の招きでヴェネチアで、北欧館のアーティストを盛り上げるためのスペシャルライブを行いました。日本館にはそういった発想が残念ながらまだないのが現状です。

国際的アーティストとなるかどうかの最後の一押しという場面で、国の後押しが効くのです。それは十分な予算であり、アーティストがダイナミックな展開をする後押しです。海外ならば、必ず重要な社交の場所「パーティー」をやり、そこに国のしかるべき人が出席して、皆さんに挨拶してアーティストを押し出します。ヴェネチアに1999年に初参加した中国がすでに始めていることが、1952年からヴェネチアに参加している日本に出来ないはずはありません。

大切なことは、日本の政治家や官僚、財界の人々が、日本という国の現在をアート作品として発表しているアーティスト達の活躍に気づくこと。彼らの表現は、もっとも楽しく、美しい形で日本人を語り、印象付け、コレクターに愛され、最終的には海外の美術館のコレクションに入っていって、世界中の人々の目に留まる、日本の財産になるということです。これは間違いなく文化的国益に値するはずです。

やなぎみわ「マイ・グランドマザーズ」
現在開催中-5月10日(日)まで
東京都写真美術館
http://www.syabi.com

第53回ヴェネチアビエンナーレ
期日:2009年6月7日~11月22日
オープニング:6月4日、5日、6日
日本館代表アーティスト:やなぎみわ
日本館コミッショナー:南嶌宏(女子美術大学教授、美術評論家)
http://www.labiennale.org/en/art/