当然、競争から脱落した歯科診療所は姿を消すことになる。その厳しい現状を示したものが図5だ。07年までは恒常的に「開設・再開」が「廃止・休止」を上回っていたのだが、08年以降は後者が前者を上回る“逆転現象”を引きこす年が表れるようになった。17年時点で廃止・休止した歯科診療所の数を、単純に「1年=365日」で割ると、1日当たり5.9カ所の歯科診療所が脱落していった計算になる。

そうしたなかには多額の負債が残り、「破産」「民事再生」といった法的整理を余儀なくされる歯科診療所も出てくる。帝国データバンクの調査によると18年のその数は23件で、過去最高を記録した(図6)。同社情報部の阿部成伸さんは「歯科医師の間でショッキングな数字として捉えられ、今後も増加するのではないかと懸念されています」という。

そして、歯科診療所の経営の実態を示したものが図7で、サンプル調査をもとに1診療所当たりの損益構造を示したもの。調査に協力した歯科診療所は経営に自信のあるところが多いことが推測され、保険診療ならびに自由診療で収益を伸ばしている。しかし、歯科衛生士の給与や家賃などの経費の負担が膨らみ、“勝ち組”に見えるこうした歯科診療所においても、利益は“ジリ貧傾向”にあり、競争は厳しさを増しているのだ。

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