今、ノートによく登場するのは上司の名前

ならばノートの出番は減ったのでは? と聞けば、「ところが、そうでもなくて……」とポツリ。

昨年4月、次なるチャレンジをと転職したのが、オンラインの英会話サービス事業を展開するレアジョブだ。ちょうど新規事業として、マンツーマンで英会話学習をサポ-トする短期集中プログラム「レアジョブ本気塾」が立ち上がったところで、事業部長として入社。16名の部署のマネジャーを任された。

横尾さんは店舗開発のノウハウを買われ、さらにはマーケティング、人事、採用、労務、営業などすべてを担うことになる。そこでも失敗は数々あったという。

「経験のない業務をたくさんやらなければいけなくなったという不安があり、自分に知識がないために上手くいかなくてイライラしてしまう。事業を拡大しろといわれて入ってきたのに、なぜ出店させてくれないんですか、などと滔々と書かれている。今、ノートの中でよく名前があがるのは上司ですね(笑)。でも、ノートに分析しながら埋めていくと、経営陣としっかりコミュニ―ケーションをとれていないことに気づく。それが自分の反省だったという、いつものパターンですね」

5分考えてわからなければ周囲に聞こう

とにかくわからないことは考えても仕方がない。「すいません……」と言いながら、何でもすぐ聞きに行く。スタッフにも常々言うのは「もう5分以上考えるな、わかんなかったら聞いておいで」と。自分も管理職だから恥ずかしいなどと臆せず、部下にも教えてもらう。すると上司や部下も親身になって答えてくれるのだ。

ちょうどレアジョブに入社したとき、100冊目に入ったイライラノート。まもなく1年が過ぎ、すでに101冊目になった。

「まあ、よくこれだけイライラしてきたなと思うし、まだまだ何冊続くのかわからない。今でもイライラは増えていて、たぶん一生無くならないと思います(笑)。でも、このノートに出てきた登場人物は私を成長させてくれた人なので、もう逆に感謝していますね」

過去に誰が登場してきたかは秘密で……と照れる横尾さん。イライラの背景には自分の失敗がかくれている。それを解決することで自信が生まれ、成長の証になっているとあくまで前向きだ。これまで学んできたことを、部下にもしっかり伝えていきたいと思っている。

いったい何冊まで続くことだろう。だからこそ、「自分の成長記録」と楽しんでもいるようだ。

横尾 千亜紀(よこお・ちあき)
レアジョブ 本気塾事業部 部長
1989年、そごう入社。専業主婦、ソーテックを経て99年、ベルリッツに転職し初めて管理職に。アビバの立て直しを手掛け、2018年より現職。

文=歌代幸子