ゆとり世代の僕が声を大にして言いたいこと

「これだからゆとりは」。部下の扱いに困ったとき、ついボヤいてしまうことも少なくない。そんなネガティブなイメージを持たれがちな当のゆとり世代はどう受け止めているのだろうか。3人のゆとり世代に話を聞いた。

「会社でも取引先でも、面と向かって『ゆとりだ』と言われることはしょっちゅうです。『円周率は3だったんでしょ』『土日は休みだったでしょ』『教科書が薄かったでしょ』、ほかに言うことはないのかと呆れるほど、みんな同じことを言いますね」

※写真はイメージです(写真=iStock.com/chachamal)

メディア関係の仕事に就くTさんは開口一番そう語った。ゆとり教育という言葉をネガティブな意味で使う人は多い。だが、そもそもゆとり教育について多くの人が勘違いしているという。

「円周率は3.14ではなく3だとしか教わっていない、というのはデマであることを知っている人は最近やっと増えましたが、それ以上に一番勘違いされていることがあります。ゆとり教育は学力低下を招いたと言われることです。その根拠によく使われるのが、経済協力開発機構(OECD)による学習到達度調査(PISA)。日本はゆとり教育導入後の03年、06年の試験で順位を下げたというものです。でも、ゆとり教育は02年から始まった。たった1年で急激に学力が低下するものでしょうか。さらに、09年、12年の試験で順位を上げています。この調査は15歳が対象なので、順位を押し上げたのはゆとり世代なんです」

そんな状況が許されていることは、社会として危険だとTさんは語る。

「僕が声を大にして言いたいのは、ゆとり教育がいいものだと思って施行したのは上の世代のあなたたちじゃないですかということ。それまでの教育に問題があると思ったからゆとり教育に変えたわけですよね。それなのに本人に向かって『お前はゆとりだから』なんてよく言えるなと思います。ゆとり批判って、社会が許すヘイトスピーチになってしまっているんです」

ゆとり世代への批判をどう受け止めているかはわかった。では、彼らの上司にあたることが多い40代以上の働き方や人生に対しては、どう思っているのだろうか。大手銀行に勤めるNさんは「言葉に説得力がない」と話す。