なぜ「バフェット流」が通用しなくなったのか

「投資の神様」と呼ばれてきたウォーレン・バフェット氏が苦境にある。バフェット氏の率いる、米国の大手投資会社バークシャー・ハサウェイ(バークシャー)が、2018年第4四半期(10~12月期)の決算で約254億ドル(2.8兆円)の巨額赤字を出したのだ。

赤字の主な原因は、筆頭株主として26.7%の株式を保有する米食品大手クラフト・ハインツの株価が大きく下落したことだ。それに加えて、昨年秋以降の米国の株価下落により多額の評価損が発生した。

2018年5月5日、オマハでの株主総会に出席するウォーレン・バフェット氏(写真=Avalon/時事通信フォト)

これまで順調な運用成績を上げてきたバフェット氏は、なぜ苦境に直面しているのだろうか。元々、同氏の得意な投資の仕方は、多くの投資家が注目しないような一種の“出遅れ株”に投資し、その株式が徐々に値上がりするまで長期投資を続ける手法だ。そうした投資手法は“バリュー株投資”と呼ばれる。

ところが、最近、通信技術の目覚ましい進歩等によって、値上がり益の見込める株式が先進の技術やビジネスモデルを持つIT関連銘柄に集中する傾向がある。その結果、バフェット氏の投資手法が、世界経済の速い動きに対応しづらくなっているといえるだろう。

成長期待のある企業が「わからないもの」になった

バフェット氏の投資手法の主な特徴は、“バリュー株投資”と、“自分自身でわかるものに投資すること”だ。バリュー株とは、多くの投資家が注目していない企業の株式をいう。例えば、バフェット氏が保有してきたクラフト・ハインツは、優良ブランドを複数持ち、事業の安定性が高いとされてきた。それはバリュー株の代表格だ。

そうした“バリュー株”と対照的に、成長期待の高いスター企業を“グロース株”という。「GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)」などのIT先端銘柄は、その筆頭格だ。

バフェット氏は、事業内容を理解でき、持続的な成長を期待できる企業の株を、できるだけ安く買ってきた。リーマンショック直後、バフェット氏が米大手金融機関ゴールドマン・サックスに出資したのはよい例だ。

反対に、バフェット氏は“わからないもの”には投資してこなかった。1995年から2000年にかけての米国IT企業の株価高騰(ITバブル)はよい例だ。

当時、多くの投資家が「“ドットコム(.com)”と名の付く企業であれば、成長間違いなし」と過剰な期待を抱き、株を買った。米国の株式市場では、“買うから上がる、上がるから買う”という根拠なき熱狂が広がり、株価が大きく上昇した。1998年にFRBが利下げを行い、投資資金が株式に流入しやすい「カネ余り」の状況ができていたことも、バブル膨張を支えた。