マクロ経済スライドで、物価上昇ほどには年金は増えない

年金がなくなることはない。では、給付額はどうだろうか。年金の給付を抑えるため、2019年度にはマクロ経済スライドが発動される。

マクロ経済スライドとは、物価や現役世代の賃金が上昇した場合、「物価や賃金の上昇率」から、現役世代の人口減少などを反映した「スライド調整率」を引いたものを改定率とし、年金額の計算にあてる仕組みをいう。

例えば賃金(物価)上昇率が1.5%で、スライド調整率が0.9%なら、改定率は0.6%。前年の年金額に0.6%を掛けて、年金額を決める、ということになる。

言い換えれば、賃金や物価は1.5%上がったのに年金は0.6%しか増えない、ということになり、0.9%分、購買力が下がることになる。

今後も物価の上昇基調が続いた場合、年金額は物価上昇より抑えられ続けることになり、購買力はどんどん下がることになるが、極端な物価上昇が続くとは考えにくく、「少し節約すればカバーできる程度」と考えられる。

2019年度の年金額は、国民年金(老齢基礎年金)が78万100円(月額6万5008円)で、前年度と比べて67円プラス、厚生年金は187万7966円(基礎年金を含む。月額15万6496円)*で同227円プラスとなっている。

*平均標準報酬額42.8万円で40年就業した場合

保険料は上げ止まり。払えない場合は免除あり

保険料についても気になるところ。自営やフリーランスの人は加入者一律の国民年金保険料、会社員は賃金に応じた厚生年金保険料を払っている。いずれも段階的に引き上げられてきたが、国民年金保険料は月額1万6900円(2019年度は1万6410円。保険料改定率がかかる)厚生年金保険料率は、収入の18.3%で固定され、引き上げは終了している。とはいえ、厚生年金保険料は賃金によって決まるので、会社員の場合、賃金が上がれば保険料も増える。

国民年金の保険料は現金納付より口座振替、月払いよりまとめ払いの方が安くなり、2年分を口座振替で前納すると、2年分で1万5760円も安くなる。

また思うように収入が得られないなど、保険料の支払いが困難なら、保険料の支払いが免除される制度もある。申し出をせずに滞納すると加入期間にカウントされないが、免除の手続きをすれば加入期間にカウントされる(年金額にも一部反映される)ので、手続きは必須だ。

民間保険会社の「個人年金保険」では保険料が払えなくなれば失効してしまうが、国の社会保険である公的年金は、払えない人も仲間外れにしない、というのが心強い。