第一線で活躍する女性は絶対に泣かない

――メリー・ポピンズはひとりの職業人として自分の使命を貫きます。同じように現実社会でキャリアを積んでいこうとする女性たちへアドバイスをお願いします。

【谷原】働く女性が置かれている環境はなかなか大変ですよね。男性と同じ仕事を求められる場合もあるけれど、男性のように体調がずっと一定ではないですし、男性と同じ筋力があるわけでもない。だから、そこで無理して張り合ってしまうと、結局、男性にとっても女性にとっても得がない気がするんです。女性だからこそできることを見つけると、より活躍できるのではないでしょうか。もちろん、僕ら男性側も、男性ができることと女性ができることの違いをちゃんと分かった上で、良い関係性を築けるように気を配る必要があると思っています。

【平原】むしろ私の方が働く女性としてアドバイスを聞きたいぐらい(笑)。私は19歳の時にデビューし、去年15周年を迎えたんですが、やっぱり音楽界の中で生きていくのはすごく大変なことで、仕事をしていくと、どんどん“男”になっていくんです。

【谷原】それは意外(笑)。性別を超えた人間としての部分が大きくなるということですか?

【平原】そうかもしれないですね。例えば、私が憧れているオノ・ヨーコさんは「オノ・ヨーコ」という存在だと思うんです。マイケル・ジャクソンもそうです。私もそういう存在になっていけたらいいなと、最近思うんですね。もちろん、それには女性としての品格といったものがなければいけないとは思うんですけど……。

仕事を続けていくには「なぜ夢をかなえようと頑張っているのか」ということを忘れなければ大丈夫だと思います。私の場合は家族を幸せにしたいから頑張っていますが、家族じゃなくても、大好きな彼でもワンちゃんでも、何か自分の“家”みたいなものをひとつ持つことで頑張れる。あと、泣かないことですね。女性の涙は全てを狂わせます(笑)。女性が涙してしまう場合も「泣いたらなんとかなる」と思っているわけではないけれど、やっぱり第一線で活躍されている女性は絶対に泣きませんから、それが夢をかなえる第一歩だと思っています。そう考えると、毅然としたメリー・ポピンズの生き方にもつながってきますね。

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映画『メリー・ポピンズ リターンズ』
公開中
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

 1964年公開の名作『メリー・ポピンズ』をリメイクしたミュージカル映画。エミリー・ブラント演じる魔法使いのメリー・ポピンズが、母を亡くした悲しみから抜け出せずにいる子供たちの教育係となり、一家の危機を救う。オリジナル・ソング『The Place Where lost Things Go』(「幸せのありか」)がアカデミー賞歌曲賞にノミネートされている。

構成=小田慶子