男子校と女子校で違う“注意の仕方”。男子の場合、「山田、黙れ!」でいいが、女子の場合は「はい、みんな集中!」と全体に声をかけたほうがいい。なぜなのか。東京都世田谷区の名門女子校「鴎友学園」の吉野明名誉校長は、「人前で褒めたり叱ったりすると、周囲の女子からの攻撃対象になってしまう」と説く――。

※本稿は、吉野明『女の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)のCHAPTER2「知っておきたい女の子の特性」の一部を再編集したものです。

人前で名指しで叱ることは、女子に限っては絶対にNGだと吉野氏。「それが心の傷となったり、『あの先生の授業はもう聞かない』などと頑なになって成績が下がってしまうことがあるからです」。※写真はイメージです(写真=iStock.com/skynesher)

注意が通りにくい男子、敏感に受け止める女子

女の子の思考の特徴は、男子校と女子校の朝礼での先生の注意の仕方を比べるとよくわかります。男子校では、「山田、列に戻れ!」「佐々木、座れ!」「岡田、黙れ!」など名前と行動がワンセット。1人ひとり何をすればいいか、いけないのかを具体的に伝えなければいけません。

一方の女子校では、「ちゃんとして!」「はい、みんな集中!」といった声かけで事足ります。もともと他人とのおしゃべりが好きな女子の場合は10歳を超える頃から言語的な抽象化能力が育ち、それまで以上にコミュニケーション能力も上がってくるため、「ちゃんとして」という一般化された注意方法でも、各自の頭にきちんと入っていくのです(おしゃべりだけは止まらない時もありますが……)。

そのような女子に対して、男子相手のように注意してしまうと、「もっとちゃんとしなくてはいけないのかな……」と過剰に考えさせることになってしまいます。へたに個人名をあげて具体的に注意してしまうと、その子の自己肯定感をダイレクトに下げてしまうことになりかねません。注意の仕方にも男女差があるのです。

全体への注意内容は自分が言われていることとして耳に入らない男子と違って、女子は自分のこととしてしっかり聞いています。ですから、たとえ個人ではなく全体に対してでも、あまりに注意されることが多いと女の子は疲れてしまいかねません。

また、基本的に女の子は何をすべきか、どうすべきかがわかっていますから、あまりに男子に対してのような詳細な注意が続くと「わかってるわよ」とヘソを曲げてしまうこともあります。思春期の女子に注意をする時には、相手が少なくとも言葉の上ではわかっているであろうことを前提にしてください。