介護保険施設に入居する高齢者の中には、提供される衣食住のレベルの低さに不満を抱く人がいる。だが、ケアマネジャー歴15年のWさんは「最高の環境を求めないほうがいい。施設選びで本当に重要なのは、サービスの内容よりも、そこで働く従業員の表情です」という。入って損したと思わないですむ介護施設の選び方とは――。

介護保険施設のことを「よくご存じでない人」が多い

ケアマネジャー歴15年のWさんは介護保険施設である特別養護老人ホームに入所した利用者の家族から、次のような訴えを受けたといいます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/AndreyPopov)

「(入所している)母から聞いたのですが、施設がひどいというんです。食事はおいしくないし、入浴も流れ作業のように入れられるからくつろげない、と。それに入所前に受けていた(運動機能を改善させる)リハビリも受けさせてくれないそうなんです。まるで『リハビリの必要なんかない、このまま衰えてとっととあの世にいけ』と言われているようで我慢がならないというんですよ。あんまりかわいそうだから、もっと良い他の施設に替えていただくことはできますか」

親身になって話を聞いたWさんですが、ちょっと複雑な心境だったといいます。

「このような施設に対する苦情の相談はよくあります。私も話を聞き、問題があるのなら他の施設を探すようにはしています。ただ、本音を言わせてもらえば、介護保険施設のことをご存じないな、と思うことが多いですね」

介護保険施設には、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養病床)の3種類があります。いずれも要介護認定を受けた人が入居対象で(特養は原則要介護3以上)、在宅での介護が難しくなった人が入る施設です。

その人たちから、施設のサービス内容や待遇に不満が出ることがあるというのです。

「この3つの施設のうち、介護保険適用(利用者負担1~2割)のリハビリが受けられるのは老健だけなのです。老健は体の状態をよくして在宅介護に復帰することを目的とした施設ですから、当然リハビリを受けられます。一方、特養はリハビリがありません。受けたい場合は全額自己負担で受けるしかない。決して見捨てているわけではなく、制度上、そう決まっているのです」(Wさん)

衣食住の質が下がることに抵抗感を抱く高齢者

在宅介護の時は、通所リハビリを受けており、それが元気を取り戻す方法と生きる張り合いにもなっていた。それを特養では受けさせてくれない。なぜだ、と思うのですが、特養はそこまで面倒を見てくれるところではないということです。

また、老健は基本的に3カ月をめどに在宅復帰を目指すので、当初の3カ月はしっかりリハビリを受けることができますが、3カ月たっても機能改善が見られないと、リハビリの回数が減らされることがあるそうです。入居したばかりの早期在宅復帰を目指す人にリハビリが割り当てられるからで仕方のないことですが、こうした対応も“見捨てられた感”を持つことにつながっているのかもしれません。

「食事に対する不満を聞くことも多いですね。これは元気だった頃、あるいは在宅介護で家族が用意する食事を食べた時とのギャップを感じるからだと思います」(Wさん)

自宅では食材・味つけともに食べ慣れた料理が出てきます。外食でもメニューから好みのものを選べばいい。また、旅行などで自宅から離れて寝泊まりする際も、ホテルや旅館のワンランク上の料理を楽しめます。

もちろん施設の食事に、そこまで求めてはいないでしょうが、長年の食生活で身につけた味覚のレベルより落ちてしまうのでしょう。施設の食事は高齢者の健康面への配慮から、薄味で柔らかく飲み込みやすいものが多い。だから、不満を感じる人が少なくありません。入浴や居住空間にしても同様で、自宅にいるのと同じ快適さを求めることは難しい状況です。