病院が提供するのは、サービスではなく医療

【宋】そうですね。ただ、病院は医療であってサービス業ではないということは知っておいてほしい。その人の体の状態に合ったベストなことをするのが医療ですから。例えば私は、患者さんが帝王切開を希望したからといって、安易に「やりましょう」とは言いません。すべて自分でカスタマイズできるものではないのです。

イラスト=いいあい

【小】つい「こんな出産をしよう」とコントロールしたくなりますが。

【宋】そもそも妊娠自体がコントロールできませんし、出産はなおさら。最終的には自分の体が勝手に産むので、自分ですらコントロールできないのがお産です。ありがちなのは、事前に理想を描きすぎて現実が受け入れられない人。産院を選んだら、ある程度はプロに任せる気持ちが大切です。

【花】そうですよね。思い通りにならないのがお産ですよね。

【宋】妊婦さんの体の力をチーム医療でサポートするのが産院。産後ケアも含めて、層の厚いチーム力の大きい産院を選びましょう。きれいな部屋やおいしいごはんは、シティホテルのほうが安いですよ。お産は母子の安全を第一に考えてください。

▼望むお産を実現するために大切なこと
(1)出産に理想を描きすぎない
出産は何が起こるかわからない。すべて思い通りにはいかないもの。「帝王切開にしてほしい」「どうしても無痛分娩じゃないと」と自分の希望があっても、それができるかどうかを判断するのは医師です。産院はサービス業ではなく医療と心得て、プロに任せる気持ちを持ちましょう。事前に理想を描きすぎると現実が受け入れにくくなります。

(2)クリニックについて自分で調べる
常勤医や専門医の人数をはじめ、無痛分娩の可否、母乳育児や母子同室の方針、NICUの有無、個室の料金や分娩費用などはホームページを見れば、ある程度はわかります。ネットの口コミを検索する前に、候補の産院のホームページを調べて比較検討しましょう。疑問点があれば、産院に直接問い合わせてもよいでしょう。
(3)バースプランを書いて意向を伝える
「陣痛中はアロマオイルを使ってほしい」「夫に立ち会ってもらいリラックスして産みたい」など、お産に対する思いやイメージも、好きなように書いてOK。医師はバースプランを読むと、お産にこだわりがあるのか、とりあえず安全に産ませてほしいという感じなのか、その方の人となりを理解できます。