一見順調に見える日本経済。日銀の「異次元緩和」は極端な円高と株安を是正した。だが需要拡大には至らず、インフレ率2%という目標は達成できていない。東京五輪が終わった後、日本経済と私たちの生活はどうなるのか。2016年まで日銀の政策委員会で審議委員を務めた白井さゆりさんに聞いた——。

「仕事はあります。ただし、選ばなければですが」

まずは雇用。人口減少に伴う労働人口の減少で人手不足だった労働市場はアベノミクスで加速した(図1・2)。

「五輪後も傾向は変わらないでしょう。仕事はあります(図3)。ただし、選ばなければですが」(白井さん、以下同)

日本の製造業の主力だった家電は今やかつてのような競争力はない。現在、海外と戦えるのは半導体製造装置など、資本財と呼ばれる付加価値の高い生産用機械だけだ。

「製造業はよりロボット化が進むので、雇用は非製造業と呼ばれるサービス産業が中心になります。情報通信、運送、医療・福祉といった業界のニーズはこれまで以上に増えるでしょう」