長年カフェの取材を続ける経済ジャーナリストが「現在最強」と推すカフェが茨城県にある。県内を中心に13店を展開する「サザコーヒー」だ。来年で創業50年の老舗だが、ここにきて各店は過去最高の売り上げを更新している。その原動力は震災後に入社してきた若手社員だという。優秀人材が次々と集まるカフェの秘密とは――。
昨年のJBCで、大会史上最年少の22歳でファイナリストとなった大洗店店長の安優希さん。(写真提供=サザコーヒー)

茨城のコーヒー店を「最強」に推す3つの理由

日本国内で約7万店あるカフェの店舗――。最盛期よりも半減したが、実はまだコンビニの5万5320店(2018年6月。日本フランチャイズチェーン協会発表データ)よりも多い。

そのカフェ業界で、現在、日本最強といえるのが「サザコーヒー」(1969年創業。本店・茨城県ひたちなか市)だ。個人経営の店で店舗数は13店だが、年々存在感が増している。

たとえば「スターバックス」は、国内に1363店(2018年6月末現在)もあり、現在のカフェの代名詞的存在だ。それでもサザを「最強」と推すのは、次の3つの理由による。

(1)2017年の国内バリスタ選手権「ファイナリスト」6人のうち3人が所属
(2)毎年「パナマ・ゲイシャ」など世界最高級のコーヒー豆を落札
(3)コロンビアで自社農園を20年運営し、近年は優勝や入賞を果たす

なぜ、創業者夫妻(会長の鈴木誉志男さん、社長の鈴木美知子さん)が半世紀前に始めた1店の個人店が、ここまで成長できたのか。

「農園」「コーヒー豆」「バリスタ」が強い

(1)は、昨年のJBC(ジャパンバリスタチャンピオンシップ)の結果だ。同大会はコーヒーを淹れる技術者・バリスタが技を競う国内選手権である。昨年は、本間啓介さん(当時32歳)が2位、飯高亘さん(同年齢)が5位、安優希さん(同22歳)が6位で、同じ会社から決勝進出者3人が出るというのは、大会史上2度目の快挙だった。今年の大会も、本稿の発信時点で準決勝まで終え、3人ともセミファイナリストに残っている。

(2)は、サザの「豆」の最大の特徴だ。最高級のコーヒー豆「パナマ・ゲイシャ」(中米パナマ産のゲイシャ品種の豆)をはじめ、毎年、海外のコーヒーオークションで高級品種を落札している。これは国際審査員も務める副社長の鈴木太郎さん(一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会理事)が主導している。

(3)も、中小規模なカフェでは珍しい取り組みだ。1998年から南米コロンビアでの「サザコーヒー農園」(自社農園、共同経営の農園)を運営している。各農園とも栽培方法にこだわり、軌道に乗るまで苦労したが、近年は成果も出た。2017年にはコロンビア国内の品評会で優勝、今年も別の品評会で6位に入賞した。

つまり、コーヒーにおける「川上」=農園栽培、「川中」=コーヒー豆の調達、「川下」=店での抽出・接客、それぞれが強いのだ。スターバックスやドトールの大手チェーン店も、自社で農園経営を行い、コーヒー豆を販売するが、近年の実績はサザに軍配が上がる。

それに加えて今回紹介したいのは、若手社員の仕事への意識だ。