梅雨から夏、「におい」が気になる季節だ。ビジネスでも「悪臭」が相手に与える印象は非常にネガティブ。だが、人は自分の臭いには鈍感なもの。さらに、わかっていても対策が不完全な人も多い。『日本人はなぜ臭いと言われるのか』(光文社新書)を出した内科医の桐村里紗氏は、「日本は、歯磨きの方法がガラパゴス化しており、ダメな歯磨きで口臭につながっている人が多い」と指摘する。では、正しい歯磨きの仕方とは――。

※本稿は、桐村里紗『日本人はなぜ臭いと言われるのか』(光文社新書)を再編集したものです。

ガラパゴス化する日本の、NGな歯磨き法

さまざまなことが特殊に進化し、ガラパゴス化している日本。歯磨きの方法も、実はガラパゴス化していることの一つだ。それどころか、日本人の歯磨きの方法は、虫歯や歯周病を悪化させ、口臭の原因になっている可能性がある。

写真=iStock.com/itakayuki

残念ながら、多くの日本人は、世界では非常識とされる、誤った歯磨き方法を行っている。「食後すぐに歯を磨く」という方法だ。

子どもの頃、母親や学校の先生から、「食べたらすぐに歯磨きしなきゃダメでしょ!」と怒られた経験はないだろうか。

以前はそれが良いとされ、「1日3回、3分間、食後3分以内に歯を磨こう」という「3・3・3運動」が日本全体で推進されていた。

国全体がそれを良しとしてしまったのであって、親や先生を恨んではいけない。科学的な1つの論理は、後に覆(くつがえ)される可能性があるのが世の常だし、あるコミュニティーの常識は、別のコミュニティーの非常識とは、よくあることだ。

90年代よりも現代のほうが歯周ポケットが増えている

絶対的真理でない限り、それらを100%信じ込むのではなく、常にアンテナを立てて、自分自身をバージョンアップできるようにしておくのが賢明である。

厚生労働省によると、1日2回以上歯磨きをする日本人は、昭和44年は20%以下だったのが、年々増加し続け、平成28年には77%になっている。平成11年と平成28年を比較すると、3回以上歯磨きをする人も右肩上がりで、10%以上増加している。

それにもかかわらず、治療対象となる4mm以上の深い歯周ポケットを持つ人は、平成11年から平成28年で、どの年代でも増加しているのだ。75歳以上では、20%以上も増えて、50.6%。なんと、15~24歳でも、17.6%となっている。

ちなみに、平成11年といえば、ミレニアムを目前にした1999年。懐かしの90年代よりも、現代の方が、歯周ポケットが多いなんてことがあってよいのだろうか。

いろいろな要素が絡み合うため、この原因は一概には言えないが、歯磨きの回数が増えたところで、歯周ポケットの形成予防には功を奏していないことは言える。

歯周ポケットが形成されると、当然、炎症から口臭の原因にもなるので、諸外国から「口が臭い国民」と言われても仕方がない。