オリンピック後「唯一」の経済活性化装置

政府は、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案を4月27日に閣議決定し、国会へ提出する方針を固めた。与党は今国会における成立を目指す。IR区域認定数は最大3カ所となる見込みで、横浜、大阪、長崎など日本各地で誘致に向けた検討が進められている。

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政府が認めているのは、カジノを含む特定複合観光施設。シンガポールのように、カジノを主要施設の一部として捉え、レジャー、ビジネス、エンターテインメントを含む統合型リゾートとして設計することが想定されている。

そもそも、今、日本でカジノ設立を進めることにどのような意義があるのだろうか。東洋大学国際観光学部准教授の佐々木一彰氏は次のように解説する。

「都市部につくる場合は国際都市間競争に勝つため、地方につくる場合は地方創生のためというように、設立地によって主要な目的は異なりますが、どちらにも共通するのは、雇用の創出を伴う景気の浮揚策になることです。2020年開催の東京オリンピックを2年後にひかえ、今は景気もよく、世の中全体が人手不足になっています」

「とはいえ、オリンピックが終わった後の景気は不透明。そのうえ、AIの進化と浸透により失業者が出るともいわれている状況です。これらの課題の解決策のひとつとして期待されているのが、カジノを含む統合型リゾートの設立なのです。さらに、外国人旅行者の増加と、それに加えてカジノでの消費、すなわち“客単価”のアップも期待されます」

カジノができると新しい経済圏が生まれる

カジノは単なる「ギャンブル好きのための施設」ではなく、経済を活性化させる装置ということだ。であるならば、カジノに行かない人にとっても経済的な影響があるはず。個人や家計にはどのような影響を与えるのだろうか。

「大きく分けて3分野、(1)雇用創出、(2)自治体サービスの向上、(3)産業振興です」(佐々木氏)

佐々木氏によれば、カジノを含む統合型リゾートが設立された場合、新しい経済圏が生まれることが見込まれる。シンガポールのカジノをもとに分析すると、その仕組みはこう予想される。まず、カジノを中心に、飲食店やホテル、スーパーやコンビニなどが建設される。すると、それらの施設で働く従業員が必要となり、制服のレンタル、おしぼりや割り箸といった消費財など、施設に関連する産業がその地域で生まれることになる。