リニアの体験乗車の案内係という役割

そんな彼女が3年ぶりに山梨実験センターに戻ったとき、新たに与えられたのが、リニアの体験乗車の案内係という役割だ。

同社は年に数度、一般向けに超電導リニアの体験乗車を実施している。その際、普段は走行試験後の整備やデータ解析を行う技術部門の社員も、乗務員服に着替えて乗客を案内する。夏休みの時期は、子どもたちが「時速500km」の体験に歓声を上げ、平日は高齢の人々もやってくる。

「最初は私に接客ができるのかな、と不安でした。でも、実際にやってみると、お客さまと触れ合う機会は技術職にとっても本当に大事だと感じます。自分の仕事が世間に注目されていることを実感しますし、やりがいにもつながっています」

リニア中央新幹線の品川-名古屋間の営業運転スタート予定は2027年――。10年先のことだが、「新しい技術の開発に携わっていると、時間の経つのがとても早く感じます」と彼女は話す。「入社からの6年があっという間だったように、これからの10年間もあっという間なんでしょうね」

中央新幹線が開通したとき、自分がどのような技術者になっているのかは想像もつかない。ただ、近年は同社でも女性の技術系総合職の採用が増えており、多くの後輩が自分の働き方を遠くから見つめている、という自覚がある。

「10年後にどんな仕事をしていたとしても、後輩の女性社員の目標になるような働き方をしていたい。それこそ、誰かにモデルケースと言われるような存在になれればうれしいです」

撮影=市来朋久