年内には個人事業者向けにもサービス開始
岡本社長は実は弥生の社長でもある。2008年に弥生の代表に就任したときから、オンラインレンディングサービスを手がけたいと考えていたという。
「会計ソフトは自動車のスピードメーターや燃料メーターと同じで、経営の状況を把握するための物差しなのです。会計ソフトのデータを見れば、経営者がいまアクセルを踏むべきか、ブレーキをかけるべきか分かる。もっとも、弥生としてできるお手伝いはそこまで。しかし、お客さまが安心してアクセルを踏む、あるいはブレーキをかけるためには、必要なときに必要な資金をスピーディーかつ簡便に提供したい。それがオンラインレンディングだったのです。だが、簡単に始めるわけにいかず、2014年にオリックスグループの傘下に入ってから現実的に進み始めました。オリックスの与信ノウハウを活用し、この2年間準備を進めてきました。現在、まだ積極的に宣伝をしていないので、融資件数は100件未満ですが、利用者にはとても前向きに評価してもらっており、手応えを感じています。少なく見積もって2022年度までに5万件、融資金額数百億円を目指します」
オンラインレンディングは、フィンテックベンチャーの本命分野の一つと期待され、アメリカで多くのベンチャーが登場、成長を遂げている。アメリカの市場は2016年には融資額が340億ドルを突破した。もっと勢いがあるのが中国で、アメリカの市場規模の7倍に達している。一方、日本はアメリカの100分の1しかない。日本市場にもニーズがあることは明らかである。
金融機関もアルトアのサービスに関心が強く、現在、千葉銀行、福岡銀行、山口フィナンシャルグループ、横浜銀行と業務提携を結んでいる。これら以外も30行程度と交渉中で、地域金融機関には新たな市場を発掘する上で魅力的なサービスと言えるだろう。
「現在のアルトアのAI審査は母集団が小規模事業者ですが、この母集団を中規模の事業者に変えれば、中堅向けのより高額な融資にもAIを活用することは可能です。AIに事前スクリーニングをさせ、その後、人間が審査すればいい。また、会計 データを元にAIエンジンで経営診断することも可能なので、会計事務所を通じて各事業者にフィードバックするサービスもできるでしょう」
現在、アルトアのサービスは法人だけが対象だが、年内には個人事業者向けにもサービスを始めたいと岡本社長。当面は弥生会計の利用者だけだが、「他社の会計ソフトのデータもゆくゆくはAI審査できるようにしたい」と語る。
利便性が認知されれば、オンラインレンディングサービスは急速に普及するかもしれない。