アポロシアターは3階席まであります。劇場の全体に音をまわすのは難しい空間と言える。私はスタッフに客席に散らばってもらい、声の聞こえ具合を確かめてもらいました。そうしたら、何度うたっても、日本のホールよりも残響が多い。そのままの状態では後ろのお客さんには私の歌が聞こえにくくなってしまう。けれども、音響をいじるのは最小限にしました。空の劇場だと残響が多いけれど、満員になるとお客さんが音を吸収します。しかも冬の方が厚手の服を着ているから余計に音を吸う。音響をいじりすぎると、今度は音がうるさく感じる。リハーサルっていうのは自分の歌声を確かめるだけじゃありません。客席の埋まり具合を考えながら、その日の音の出し方を決める作業なんです。

思えばデビューした頃、1000人収容の会場に客が300人も入らなくて、公演がキャンセルになったこともありました。ギャラを興行師に持ち逃げされて、出演がなくなり、キャッチボールで時間をつぶしたこともあった。そんなつらい経験もしているから、チケットが全部売れて、お客が入ってくれることは本当に嬉しい。

私の本業は歌手です。うたうことが根幹で、テレビの司会やCMは枝葉なんです。それははっきりと言えます。