任せる気持ちが強まった、出向直後のある事件

葛藤を抱いていたころ、上司から「気分を変えてみたらどうか」と言われ、流通政策部に異動。ちょうど取引先が酒販店中心からコンビニやドラッグストアなどに多様化しつつある時代だった。

「30代半ばの私が一から流通を学べるか不安はありました。でも会社生活の中でアウトプットばかりだと疲弊してしまいます」

Favorite Item●気合を入れるときはWILKINSONかミンティアブリーズ、リラックスしたいときはサプリメント。

流通政策部に在籍した8カ月間は貴重なインプットの時代となり、直後にアサヒ飲料に出向したときは仕事に自信が持てた。出向先は2期連続赤字の1番厳しい時代。商品開発の課長として着任した千林さんは、ここでのテーマは部下に任せることだと考えた。

「任せることは相手を信頼すること。信頼することは相手のアイデンティティーを認めること。今まで自分しか見えてなかった私にとって、部下のアイデンティティーを引き出し、組織力に変えて成果を出していくことが求められました。でも、任せるのは怖い」

躊躇(ちゅうちょ)する背中を押したのが着任早々の事件。パッケージに表示ミスがあり商品を一部回収。

「組織を挙げて処理に当たったとき、怖くても部下を信じ、任せなければと思いました。部下と率直に議論しました。聞く努力をすごくしましたね」

組織力が上がると新商品も当たり、V字回復を果たす。いつしか「自分がとがる」から「チームを光らせる」人に変わっていた。

▼役員の素顔に迫るQ&A

Q. 好きなことば
「なせば成る、なさねば成らぬ何事も、成らぬは人のなさぬなりけり」(上杉鷹山)

Q. ストレス発散
ショッピング、飲むこと

Q. 趣味
飲むこと、読書、旅行

Q. 愛読書
『陰翳礼賛』(谷崎潤一郎著)
『コトラー マーケティングの未来と日本』(フィリップ・コトラー著)

撮影=澁谷高晴