Case 3:刺さる声がけで訳あり部下を伸ばす

▼可処分時間は限られている。どこに資源投下すべき?

若手に多い、同じミスを繰り返す部下にはどう対応するべきか。

森上さんが最初にするのは「ミスに至ったプロセス」の解明。

中原さんも同じ考えだ。

「遅刻の常習者に遅刻するなと何度言っても効果はありません。実は問題の根本原因に本人が気づいていないケースが多いんです。性格がルーズだから遅刻するんだと思われがちですが、集中しすぎて時間の感覚を忘れているせいかもしれない。原因をつきとめたうえで、再発しない方法を一緒に探ることが大事です」

部下の仕事の完成度が低かった場合はどうだろう。

野村さんは「お客さま」を主語にして部下に緊張感を持たせる作戦をとっているが、中原さんは、「クオリティーの期待値にズレがあり、部下の認識が甘かった場合は、私が満足できない、と自分を主語にして伝えるべき」と回答。「そのうえで、『お客さまを満足させるにはどうすればいいか、一緒に考えよう』とサポートするのがよいでしょう」

最後に、可もなく不可もなく、自分を平凡だと思いこんでいる部下に対しては?

松田さんは「平凡も個性」として部下の存在価値を認めている。

一方、中原さんは「小さな目標を与え、1つずつ達成することで自信をつけさせる」方法を挙げた。ただし、このタイプの部下が目に見えて結果を出すまでには、かなり時間がかかるという。

「マネジャーは限られた時間をいかに配分するかを、冷静に考える必要があります。チーム全体の生産性を上げるには、どこにエネルギーを注ぐのが最も有効なのか。部下の伸びしろや、本人の成長意欲を考慮しながら優先順位をつける。シビアなようですが、そうしないと自分自身が壊れてしまいます」(中原さん)