自分が抜擢されたとき気をつけておきたいこと

「ガラスの崖」がどのくらい信頼性のあることなのかはさておき、もし読者の女性が、CEOとはいかないまでも幹部やリーダー的な立場に抜擢されたとき、気をつけたいことは確実にあります。それについて、いくつかお伝えしておきましょう。

まず、自分が抜擢された理由を知ることが大切です。

一億総活躍といわれる中で、会社が数字目標を達成させるために、「とりあえず」女性をポジショニングすることもあるでしょう。すなわち、実際の働きを期待されていない場合が非常に怖い。ちょっとした失敗で、それこそ崖から突き落とされ、「やっぱり女性はできない」と言われかねません。

イラスト=宮原葉月

責任を持って仕事をするためには、自身の経験は足りているか、周りのサポートは確保できるか、メンターとなる人生の先輩はいるか、リソースは十分かどうかを見極めるべきです。現状を知り、足りない部分は学び、努力をして高める必要があります。

そのときに大事なポイントとして、女性に対する評価やフィードバックには偏りがあるということも知っておきましょう。最近ではアメリカのヒラリーとトランプの比較において「ヒラリーは笑顔が足りない」と言われました。男性なら真面目な顔をしていれば「一生懸命国のことを考えている」と言われるところを、女性であるだけで批判される。オリンピック選手でも、素晴らしいプレーをした後、男性はその内容について質問を受けるのに、女性は夫や子ども、家庭のことを取り沙汰されることがよくあります。

このように、男女の評価に偏りがあることを認識しておく必要があります。自分が受けた評価やフィードバックのうち、どれが本当に自分にとって大切な情報で、どれが相手のつまらない偏見なのかを見極めるためには、メンターが有効です。社内であれば違う部署の先輩、違う会社や違う業界の大先輩が頼りになります。複数の男女のメンターがいると、さまざまな視点からアドバイスをもらえます。

また、「女性だから」という期待やプレッシャーを受けるようなら、それは無視したほうがいい。「わが社の女性のロールモデルになりなさい」と言われても、余計なことを背負う必要はありません。もし「女性だから」という声が聞こえたら、「これは私の問題ではなく、あちらの問題」と振り分けることです。

そして、最も大切なことですが、女性には、自分がやりたいことをしっかりと貫いてほしい。所属する会社が大企業であっても、昭和のサラリーマンのような人生を目指す必要はありません。この仕事を引き受けることでいい経験になるのか、人生のためになるのか、そういう基準を持つことです。

働く女性にとってのこれまでの主な問題は、産休や育休、時短勤務などの制度だったかもしれませんが、今はさらに次のステップに目を向けるとき。女性は厳しい環境の中で働いているだけに、やる気があれば一生懸命頑張ることができます。会社も、そういう人を大事にするべき時代です。