「無利子国債」など発行してはいけない
震災復興の長い道のりが始まった。復興資金の調達方法として、震災復興国債の発行や復興税の導入などが検討されているが、国債に頼るのは避けるべきだと私は思っている。
政府は発行した国債を日銀に引き受けさせることも考えているようだ。戦時中に実施して、ハイパーインフレの原因となった忌まわしき禁じ手である。戦後最大の国難には違いないが、それほどの劇薬が今必要な時期なのかといえば、やはり違うだろう。
日本経済はこの20年で15%も縮小し、依然、弱含みで推移している。弱り目に祟り目の大震災に大津波、そして最悪の原発事故だったわけで、弱体化した政府があと一つでもバカをやれば、すぐに国債暴落の引き金を引きかねない。
亀井静香・国民新党代表などを筆頭にした、いわゆる無責任経済膨張論者は「無利子国債を発行せよ」とまで主張している。とんでもない愚策である。
無利子国債は利子が付かない代わりに相続税を免除しようという代物で、これを出せば大金持ちが飛びつく。3億円を超える相続は相続税を50%も持っていかれる。ということは無利子国債の形で相続すれば、50%の利子が付いてくるようなものなのだ。
超魅力的な無利子国債に金持ちが飛びつけば何が起きるか。郵便貯金や定期預金を引き出し、信託や生命保険さえ解約して無利子国債を買うだろう。国債消化の原資になっている郵貯や銀行預金が雪崩を打ったように無利子国債に流れれば、すでに流通している国債は一気に暴落して日本はジ・エンドである。無利子国債などというインチキを持ち出す官僚や政治家は、その程度のことも見通せないのだろうか。
復興財源は税金で捻出するべきで、震災直後から私が提案しているのは目的限定、期間限定の消費税だ。民主党政権は福祉目的で消費税をアップして10%、ゆくゆくは17~20%程度にしたいから、今の段階で消費税に手をつけたくないのが本音のようだが、民主党政権など持ってあと2年、どのみち次の総選挙までである。