数字で時短が進むと裏でサービス残業が増える

時短の施策を進めている会社ではどのようなことが起こっているのでしょう。以下、現場の声です。

「ノー残業デーの強制力を働かせるために、会社は照明を消し空調も止めます。でも、消灯後に隠れて残業。夏だと暑さで朦朧とし、冬は寒さで体調不良となり、労働時間はさらに延びます」(30代女性・メーカー)

「週2回、定時退社日があり、その日に残業するには上司の了解が必要です。でも、上司がいなくて了解をとれず、結局“持ち帰り残業”になってしまうことがよくあります。会社が意図的にそうさせているのかも」(40代女性・サービス)

「有休取得が義務付けられました。仕方がないので、資料づくりなど、社外でもできる仕事を有休消化日にやっています」(30代男性・コンサルティング)

「私たちのチームは、退社後に喫茶店に集まって会議をしています」(30代女性・IT)

「上司は残業を減らせと言うだけで、仕事ができなければ怒られるのは私たちです。こうした状態だと、持ち帰ってサービス残業するしかありません」(30代女性・建設)

結局、数字上では時短がされていても、その裏にはサービス残業があり、労働時間は減っていないということなのでしょう。

テレワーク推進で残業の見えない化も進む?

さて、ここまでに登場したサービス残業のケースには、共通する傾向があることに気がつきませんか。それは、「社外での労働」です。

ひと昔前までは、長時間労働にまつわる労災訴訟も少なく、また、労基署の監督もいまほどきつくありませんでした。そのため、まだ社内にいるのに退勤のタイムカードを押すという形のサービス残業が成り立っていたのです。

ところが現在は、入退室チェックなどから、こうした「社内にいるのにタイムカードを押す」行為が許されなくなってきました。そこで、「家や顧客先や喫茶店」といった社外での労働を増やすことになっています。“サービス残業の見えない化”と言えるでしょう。

昨今では、時短やWLBの充実の一環として「テレワーク(社外での業務)」が推奨されています。いつでもどこでも好きな時間に好きな場所で仕事ができて合理的、とそれを好意的に解釈することは簡単です。ただ、現実は、テレワークが「サービス残業の見えない化」に直結しそうで、素直に評価できない気がしています。

▼こんな企業は要注意!

本記事は、『辞めたくても、辞められない!』(廣済堂新書)、『2016年 残業代がゼロになる』(光文社)など、労務問題の真相をよく知る溝上憲文さんからの情報で構成しました。
結局、日本の会社は仕事が多いのです。なぜ欧米よりも仕事量が増えるのか。その理由は欧米と比べて日本では、顧客も上司もうるさいから。要は、「お客様は神様」「上司は神様」この2つの発想で、欧米ではありえないような業務をすることになります。
書類のホチキスの留め方でやり直しがあり、夕刻を過ぎた時間に「明日まで」と顧客からの発注があり、簡単なメールにも定型の挨拶や近況報告を4、5行書かねばならず……。こうしたことの積み重ねで、残業は増えていく。すべてが「大切なこと」だから、手抜きが許されません。そこを変えずに時短を叫ぶ企業は、サービス残業が増えるだけです。

▼このタイプの会社CHECK LIST

□お客様は神様的な社是社訓がある
□おもてなしや誠意を尊ぶ社風
□「みんなで考える」が大好き
□急な会議やレポートがよくある
□取材や発注に担当以外が付き添う

3つ以上あてはまったら要注意!