戦後、日本では核家族化が急速に進み、結果として年老いた両親が子や孫と離れて暮らすということが当たり前になってきている。その当然の帰結として近年急浮上してきているのが「実家問題」だ。わかりやすい問題で言えば、老人だけが住んでいる家はいずれ空き家になるかもしれない予備軍である。どう対処すべきなのか、著名不動産コンサルタントが空き家問題について解説する。

空き家の3大問題は「景観」「治安」「災害」

ここ2~3年、頻繁に取り上げられるようになった空き家問題。確かに街中でもよく空き家と思しき住宅を見かけることが増えたが、空き家の何が問題なのだろうか。

「問題は大きく分けて3つ。ひとつは景観、住環境の問題です。高温多湿の日本で人が住まなくなった木造住宅はすぐに劣化。通風されない室内はかび、腐ってきますし、通水されない排水管は錆びて穴が空く。庭木は繁茂し放題となり、荒れた住宅は地域のイメージを毀損することになります」とオラガ総研の牧野知弘氏。

そうした家に不逞な輩が入り込むことで2つ目の、治安の問題が起きる。違法薬物の取引や性犯罪などの現場になる可能性に加え、そこでの火の不始末から火災発生の心配も。延焼した場合には損害賠償を求められる危険もあり、そうなると「自分の家なんだから、放置しておいたっていいだろう」とは言っていられなくなる。

さらに劣化が進むと第3の問題が生じる。災害時に周囲に危害を及ぼしかねない迷惑な存在になってしまうのである。

「最近、増えているゲリラ豪雨や台風で屋根や壁のトタンが飛んだり、瓦が崩れ落ちたりするなどの危険が考えられますし、大地震で倒壊し、避難経路を塞ぐ、最悪の場合には周囲の人の上に崩れ落ちることすらあり得るかもしれません」。

当然、延焼のケース同様、所有者の責任が問われることにもなりかねず、空き家を放置しておくことは周囲に対して迷惑なだけでなく、所有者本人にも不利な状況を招きかねないのである。