【大西】しかし、男性社会になっている理由を振り返ってみると、結婚して子どもをもってからの活躍が難しくなっていることがあります。

【白河】時間的な制約ができるからですね。

【大西】そうです。そのタイミングで会社を辞めざるを得ない人材が極めて多い。いますぐ変えられるわけではありませんが、5年後には、女性中心のマネジメントになっていくというイメージを持っています。女性へのえこひいきかもしれませんが、お客さまに近い7対3ぐらいの割合で、逆転してもよいのではないかと思っています。

大西 洋●三越伊勢丹ホールディングス社長。1955年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。79年伊勢丹入社。紳士部門を歩んだ後、伊勢丹立川店長、三越MD統括部長などを経て、2009年伊勢丹社長執行役員、12年から現職。

【白河】現状のマネジメント層はどういう状況なのでしょうか?

【大西】いわゆる係長、課長職、店頭のマネジャークラスだと、もう、ほぼ5対5で拮抗してきています。ただ、そこから一つ上の、いわゆる部長職になると7%ぐらいです。それも5%だったのをやっと7%に引き上げたという感じです。役員クラスでは執行役員は女性が3名、取締役はなしという状況です。

【白河】そうですか。私は昭和女子大で、「女子学生のための優良企業ランキング」をデータから導きだすプロジェクトをやってきたのですが、企業を4象限でわけています。そうすると、百貨店業界は「出産、子育てを超えて長く働けるが、出世はしない」という象限の代表格なんです。それを変えていこうという取り組みなんですね。

【大西】当社も同じですね。出産して戻って時短になる方が多い。百貨店としてのメインのジョブは無理であろうという仮説で、オフィスワークなどの担当になることが多いのですが、ひょっとしたら本人の能力なら営業部長ぐらいやらせるのが一番いいという場合もある。今は本人の意見を聞くようにしています。

営業部長であろうと、バイヤーや店頭のマネジャーであろうと、お先に失礼しますと言ってもいいと私は考えています。勤務時間内にその能力を発揮できればいいんです。しかし本人も気を使うし、周りも「これからが忙しいのに」という目で見る。当社は直属の上司を含めてこれから環境を醸成する必要があります。部署にもよりますが、店頭のマネジャーが4時、5時の一番忙しくなるときにいなくなるという抵抗の方が大きいかもしれません。