自分の体格に“ふさわしい声”を出すこと

声の高さに加えて、ビジネスにおいて信頼される声かどうか判断するポイントがもう一つあります。その人の体にふさわしい音が出ているかどうかです。人間の体は楽器です。身長や体格、頭蓋骨の形などの条件でどんな声が出るかが決まっています。地声とは、その体を一番自然に使ったときの声。

例えば、バイオリンやビオラなどの管弦楽器は、形はほぼ一緒です。しかし、大きさによって、低音から高音まで奏でることができますよね。人間も同じです。身長が低かったり高かったり、ふくよかだったりやせていたりという体格の違いによって、声が異なるはずなんです。つまり、バイオリンなのにビオラのような音が出たり、重厚感あるチェロなのに甲高い音が出るのはNGです。「あれっ?」と違和感を与える声を出すと信用されなくなってしまうこともある、ということです。

低い声だから信頼感が出るのではなく、予測と同じ声が出るということが大事なのです。これが一致しないとどうなるのでしょうか? お笑い芸人みたいになってしまいます。例えば、低く怖いドスの効いた声が出そうな顔つきや体格なのに、かわいい高い声が出るお笑い芸人さんがいますよね。その意外性がギャグになります。

なぜ声に意外性があると信用されにくいのでしょうか。私が専門に研究している心理学の「対人認知」の世界では、聞き手は「この人、こういう声だろうな」という予測を持っていることがわかっています。それに対して、より高い声、または低い声が出るとギャップがありすぎて、「この人、変だな」という違和感が生まれるのです。知り合いの間柄ですと、いつもと違った声が出ていたら不信感が生まれます。例えばこんなことありませんか? 彼氏やご主人の声が高く裏返っていると、「うそをついているんじゃないか」と疑ってしまう(笑)。この心理です。

だからこそ、私たちはまず自分の地声を知る必要があります。自分の地声をトレーニングする方法をご紹介しましょう。まず、家族に話しているときの声を意識してください。朝起きて家族に「おはよう」と言う声。これはいわば化粧する前のスッピンみたいなものです。私たちはスッピンでは外出しないですよね。ですが、スッピンに見えるナチュラルメイクをします。声も一緒です。声の高さという意味では、家族に話すときの気を使わない地声のスッピン声でいい。しかし、そこにも艶が必要なのです。