多様な人々を組織に取り込み、イノベーションを起こす

人間は全くのゼロから何かを生み出すことはなかなかできませんから、組み合わせるしかない。これは、イノベーションの父と言われたジョセフ・シュンペーターが1934年に「新結合」という言葉で説明した、もっとも根本的な原理です。

ところが、人間はどうしても近くのものしか目に入らないので、目の前のものだけを組み合わせてしまう。これでは本当のイノベーションは起きません。自分からなるべく離れた遠くの知を探して、それを自分が持っている知と組み合わせなければならない。

ではどうすればいいのか。そのための有力な手法の1つが、組織をダイバーシティ化することです。多様な考え方や知識や経験をもった人々を組織に取り込み、知と知の新しい組み合わせを起こすことが、イノベーションを起こすために一番手っ取り早いのです。

問題は“ダイバーシティには2種類ある”ということです。イノベーションを起こすのはタスク型のダイバーシティであって、デモグラフィー型のダイバーシティは、実は組織にとってマイナスになることもあるのです。

なぜなら人間は、最初はどうしても見た目から入ります。その人の内面をよく知るには時間がかかるので、無意識に「この人は男」「この人は女」とグループ分けしてしまう。気付いたら男性グループと女性グループに分かれて行動するようになり、フォルトライン(組織の断層)ができて、衝突が起きてしまう。

多くの場合、タスク型のダイバーシティを進めればデモグラフィー型のダイバーシティも進むのですが、後者を強引に進めることにはマイナス効果があるということを念頭において、それを徹底的に取り除くことが重要になります。