減点法の行きつく先は破局しかない

【田中】長期的にお付き合いする場合に減点法を導入したら、これはもう破局しかないですよね。非常に短い付き合いであれば、減点していってもいいと思うんですよね。学生時代の恋愛とかだったらまだ……。

「思っていたのと違う」と言って減点するということは、思っていた理想の妻がいて、現実がズレたときに減点しているんですよね。こういう発想の人はおかしいと思うんです。繰り返しますけど、思っていたのと違うに決まってるじゃないですか、人間なんて。

これ、自分に当てはめても苦しいですよ。思ってたオレ像と現実のオレがずれたときに、「あ、オレはダメだ」って。ダメだっていうオレがオレなんだから、これを受け入れてあげないとかわいそうですよね。だからやっぱり長期的な人間関係に関しては、加点法がおすすめです、絶対。

【上】『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』川崎貴子(ベストセラーズ)【下】『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』田中俊之(KADOKAWA)

【川崎】なるほど。

【田中】だって、思ってたのと違うって楽しいじゃないですか。たとえば、超ハンサムですごいと思ってる彼とレストランに食事に行ったときに、彼がパンを信じられないくらいこぼすとしますね。

シャツが食べてるのかな? と思うくらいパンをこぼすとして……楽しいじゃないですか。あんなに素敵で、会社でもみんながイケメンって言っている彼が、実はこんなにパンをこぼすんだ、これは私しか知らない。そう思いませんか? 「思ってたのと違う」と言って別れてしまったら、その面白さが分からないですよね。

――確かに加点法のお付き合いなら、ハードル低めで結婚しても、その後だんだんと楽しくなりそうです。

【田中】ハードル低めでも高めでも、加点していくわけですから、最初は何でもいいわけです。減点法っていうのは、自分の立ち位置を勘違いしてますよね。なぜ採点する審査員側にオレがいると思ったのか、と。

●“女のプロ”川崎貴子ד男性学”田中俊之 対談記事一覧
第1回 結婚を不安視する男、幻想から離れられない女
http://woman.president.jp/articles/-/866
第2回  「結婚はコスパが悪い」という男性が結婚を意識するのはどんなとき?
http://woman.president.jp/articles/-/893
第3回 上司をおだてることは、会社の不利益である
http://woman.president.jp/articles/-/896
第4回 女性たちよ、管理職になれ!
http://woman.president.jp/articles/-/903
第5回 結婚したいのにできない人に必要なこと
http://woman.president.jp/articles/-/925
第6回 「減点法」コミュニケーションの行く先は、破局しかない
http://woman.president.jp/articles/-/926
第7回 男はつらいよ~男は「競争」、女は「協調」
http://woman.president.jp/articles/-/927
最終回 「夫が家事を主体的にやってくれない!」となぜ怒ってはいけないのか
http://woman.president.jp/articles/-/928
川崎貴子
1997年に女性に特化した人材コンサルティング会社、株式会社ジョヤンテを設立。経営者歴18年。女性の裏と表を知り尽くし、人生相談にのりフォローしてきた女性は1万人以上。プライベートではベンチャー経営者と結婚するも離婚、そして8歳年下のダンサーと2008年に再婚を経験、「女のプロ」の異名を取る。9歳と2歳の娘を持つワーキングマザーでもある。著書に、『結婚したい女子のための ハンティング・レッスン』(総合法令出版)、『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(KKベストセラーズ)など。
田中俊之
武蔵大学社会学部助教、博士(社会学)。1975年生まれ。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。2014年度武蔵大学学生授業アンケートによる授業評価ナンバー1教員。男性学の視点から男性の生き方の見直しをすすめ、多様な生き方を可能にする社会を提言する論客としてメディアでも活躍中。著書に、『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)など。

構成=すずまり(鈴木麻里子)