「激変」してからは実力主義に

「激変」は、男性社員もひしひしと感じていた。LIXILは今年4月から新事業モデルへと移行。浴室の販売戦略を担当する田尾田洋氏(40)の所属するLIXIL Water TechnologyのCEOは、ドイツの水栓金具大手・グローエ社長であるデイビッド・J・ヘインズ氏になった。以前から会社のグローバル化は感じていたが、実際に組織のトップが外国人となった今、自分の業務にもいずれは英語が必要になるのかと、より意識が高まった。

【写真上】LIXIL Water Technology Japan浴室事業部 浴室商品部主査・田尾田 洋氏「所属する組織のトップが外国人に。英語への意識が高まった」【写真中】東京・江東区にあるLIXIL WING ビルには、約3000人が勤務。昼時になると社員食堂は満員だ。会社の歴史などが展示された資料館も併設。【写真下】日替わりの総菜7種類の中から、好きなものをチョイスできる「デリ」(410円)。女性に大人気。

「藤森社長が来てからの変化は、ひとことで言えば実力主義。男女がどうとか国籍がどうではなく、本当に実力のある人は尊重され、認められるべきだと思っています」

かつて藤森氏がGE日本法人から米本社の部門長に抜てきされたとき、GE幹部に日本人はおろか、アジア人さえいなかった。ほとんどが白人のネーティブという環境のなかで「わずか30秒のボイスメールを返すのに20回でも30回でも聴き直し、自分の英語が相手に伝わるかどうかを確認した」という。

それから25年後の今日、ビジネスの世界では、ダイバーシティが合言葉となった。自分を的確な言葉で表現しながら同時に相手を深く理解し、社会に横たわるさまざまな境界線を越えていける人材が、ますます必要になってきている。LIXILの試みは、その表れだ。

取材して実感したのは女性たちがみな前向きで明るく、率直な言葉で自分自身の体験を語ったことだった。

「私に起きたことは、みなさんにもいつ起こるかわかりませんよ」

そう言った成田氏の笑顔がとても印象的だった。

撮影=吉澤健太