不正発覚後に明るみに出た1128億円の利益

2015年3月期の有価証券報告書の【主要な経営指標等の推移】では直近5年間の連結ベースの業績が記載されていますので、そこから売上高及び利益の推移を抜粋し、さらに利益率を計算してみました。

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東芝 直近5年間 連結ベース業績(著者作表)

推移表をみると、2015年3月期の売上高はここ5年では最も高いことが分かります。そして利益率こそ低めですが、2015年3月期を除けば他の期ではきちんと利益を出しています。378億円の当期純損失は過去の利益額からすると決して大幅な損だとは言えないため、そういう意味でも東芝の今回の決算数値は思ったほど悪くないという印象を受けます。

そして、「連結財務諸表に対する注記30.重要な後発事象」には興味深い事実が記載されています。

なんと東芝の子会社である東芝エレベータは2015年7月22日に同社が保有するフィンランド・コネ社の全株式を売却していたのです。それに伴い、1128億円もの売却益が計上される予定となりました。株式の売却総額は約1180億円とされているため、その分の資金が東芝グループに入ります。それだけの原資があれば課徴金や株主からの集団訴訟に十分対応できると考えられます。

また、東芝グループは2015年8月31日付で保有する関連会社トプコンの全株式3284万株を売却することを決定しています。資産効率及び財務体質を改善する目的で売却を決めたようですが、売却が実現すればまた多額の資金が会社にもたらされると推測できます。

さらに、2015年3月期の赤字の大きな要因が資産について減損処理を行ったということで、実際にはキャッシュアウトを伴わない損失であるため、連結ベースでの営業キャッシュフローが3304億円となっています。つまり、1年間の営業活動の結果、会社に3304億円のお金が入ってきていたのです。

そして不適切会計が発覚したものの、東芝グループが融資を受けている複数の金融機関からは当面の間、融資継続についての合意がもらえているようです。

以上のような様々な理由から、東芝は今回の騒動を乗り越えられるだけの財政状態だということが考えられます。