ローカルを発掘する愉しみ。2017に続く試み

(写真上)旧市街の会場、ペッパーハウスのテラスカフェでは、100%ナチュラルなミントジュースが渇きを癒してくれる。
(写真下)水郷地帯アレッピィに沈む夕日。ビエンナーレから足を延ばせば、伝統様式の船をチャーターし、近隣を散策することができる。

デリー在住でインドの現代アートに詳しい黒岩朋子さんに話を伺いました。「2012年の初回は、世界的に評価の高い作家が参加すると同時に、まだ知られていない国内の優れた作家が選定されました。ここコチでしか観るとこができない作品が一同に介し、2回目の今回はさらに進化しました。また、初回は鑑賞するためのインフラが間に合わず大混乱を招きましたが、今回は運営面が抜本的に改善されました。街中でもビエンナーレが契機となってホテルやレストラン、ショップが軒並みレベルアップしています」

また、教育普及にも積極的で、キュレーターよる週替わりの映像プログラムや、子どもや学生のためのビエンナーレのほか、公式非公式かかわらず、イベントが目白押し。さらにメイン会場に救急車で待機している公式ドクターが、自主的に作品を制作し、キャプション付きで会場内に設置しているという、世界でも例をみない盛り上がりようです。

2回目の開催にもかかわらず、街を歩けば誰もがビエンナーレを知っている、アート業界では奇跡に近い状況に。3回目となる2017年は、作品だけでなく、鑑賞環境や旅先としてもさらに期待ができそうです。

コチの2月は晴天続きで、暑くもカラッとした空気にアラビア海からの心地よい風が吹きます。アートの刺激と艶やかな色彩に包まれる街は動植物の活気に溢れ、田舎は穏やかな安らぎがあり、新鮮な食べ物と珍しいスパイスで身も心も満たされます。

ビエンナーレの旅のおまけはコチを離れ、水郷地帯アレッピイで、伝統的な様式の船を一艘貸し切り、1泊2日のクルーズを楽しみました。さらに築140年の庄屋を改装したファーマーズホテルで過ごし、夢のようなケーララ州での10日間は、私の記憶の底にゆっくり沈んでいきました。

※「ART×大人の嗜み」次回は、第56回ヴェネチア・ビエンナーレをレポートします。6月をお楽しみに。

テーマ「Whorled Explorations」とは?

直訳すると「渦巻きの探検」。螺旋や渦巻きを現すWhorled(世界を意味するworldとは発音が同じ)と、探検や探求を意味するExplorations(大航海という意味も含む)から構成されている。このテーマの起点となるのは、直接は関係ないものの、14世紀から17世紀に起こった、交差する二つの歴史的な出来事だ。

ケーララ州は大航海時代の主要な交易都市であり、中世以降のインド数学に貢献した数学や天文学の分野でケーララ派が誕生するなど、学術的・歴史的に重要な役割を果たした。ビエンナーレを、この土地に一時的に組み立てられた展望台に見立て、歴史や地理、宇宙、時間、空間、幻想、神話などを参照した世界地図を描く試みとした。

作品には伝説的な大航海時代のさまざまなキーワードが宿っている。