コミュニケーションは、多様な要素の複合体(発信側だけでも「伝え手」「伝える中身」「伝え方」が関係している)である。経営者の話を分析していくと、いかなるときにも有効な「普遍原理」のようなものが確かに存在している。ここでは、それぞれの経営者が見出した「伝え方」を考察してみよう。
「以心伝心」など外国人には通用しない
僕が、IBMの社長として外国人と一緒に仕事をしたときは、徹底的に話し合ってきた。日本の「以心伝心」では通用しないのだ。
コミュニケーションを密にして、こちらの考えを的確に伝え、向こうがどう思っているかを聞くことが大事なのだ。そこさえ、きちんと心得ていれば、仕事は熱心にやってくれる。
(09年12月14日号当時・相談役構成=松山幸二)
奈良雅弘氏が分析・解説
経済のグローバル化に伴い、日本人のコミュニケーションのあり方が変化を求められていることは確かである。
あ・うんの呼吸でわかりあえる「高コンテキスト」な国内社会とは違い、「低コンテキスト」な国際社会では、みずから発信していかないと、存在がどんどん希薄化するのは間違いないからである。
ただそれは、「英語でスピーチする訓練を」といった表層的な対処で済む問題ではない。総括で述べたように、発信力は「伝え手」「伝える中身」「伝え方」の複合体であり、「人」「中身」「伝え方」で考えていくべき問題のはずである。
椎名氏も、グローバルな社会でのコミュニケーションについて語っている。しかし、よくよく内容を見れば、国内社会において本来きちんとやっていなければならないことを、語っているだけのような気もする。
高コンテキストな環境においてさえ生産的でない人間が、厳しい低コンテキスト社会で生産的になれるはずもない。まずは人として確立せよ、そして伝えるべき中身をきちんと持て。そう叱咤されているように思えてならないのである。
アール・アンド・イー合同会社代表 奈良雅弘
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。