コバヤシ麻衣子<strong>「Untitled」</strong>2008年<br>
Photo by Ikuko Tsuchiya
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コバヤシ麻衣子「Untitled」2008年 Photo by Ikuko Tsuchiya

2000年頃から都内の新築分譲マンションでは、4000万円以上の物件のほぼ全部に、作品展示のためのピクチャーレールが装備されるようになりました。ピクチャーレールがあれば、大きな作品を飾るのが容易になりますし、展示のバリエーションが可能です。従来の壁に打ち付ける方法と違い、レールからのフックの高さが自由に調整でき、2か所で固定すれば地震でも安心です。いくつかのサイズの違う絵画を飾る場合には、額の(1) 中心を水平に合わせて飾る、(2) 下のラインを水平に合わせて飾る、(3) 大きな作品を中心に左右対称に飾るなど、いろいろな飾り方があります。

あなたが独身ならば、とくに現代アートを家に飾るのはおすすめです。玄関先に現代アートがあるなんていうのは、かなりカッコイイことだと思います。例えば、若いアーティスト、コバヤシ麻衣子の作品が玄関先にあって、彼女に「このアーティストはイギリスから戻ったばかりなんだよ」などとさりげなく話してみるのです。すると彼女は「えっ現代アーティストとお友達なの?」と驚いて、あなたの意外な趣味に一目置くことでしょう。

勝又邦彦「Skyline」シリーズより。
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勝又邦彦「Skyline」シリーズより。

リビングルームには勝又邦彦の「スカイライン」がよいと思います。ニューヨークやパリ、上海、そして東京や横浜の空と建物のスカイラインを撮影した横長の写真は、普段、見なれた風景を美しい光のグラデーション絵画のように見せてくれます。3連作を並べてリビングに飾るとベストです。空間を広く感じさせる効果もあります。

元田久治のリトグラフシリーズより<br>
<strong>「Indication -Ginza 4chome Intersection」</strong>2005年
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元田久治のリトグラフシリーズより「Indication -Ginza 4chome Intersection」2005年

ベッドルームには、元田久治の廃墟の作品はいかがでしょう。近未来かSFの世界のように見える彼の作品は、人気急上昇中です。男性のインテリアは黒が多いので、元田久治のグレートーンは映えるはずです。彼女に作品を解説することで、あなたの株も上がるでしょう。車やゴルフの趣味も楽しいですが、若いアーティストの作品を自分で選んでいる「目利き」は日本ではまだまだ少数派ですから、インパクトもあります。そのうえ、作品の価格が上昇することもあるのですから、現代アートはインテリア効果、パトロン効果、投資効果の1粒で3度美味しい趣味といえるでしょう。

私がこの仕事の駆け出しであった頃、日本を代表する洋画家を祖父と祖母に持つ友人から、とても大事な一言を言われました。「山口さん、アート作品は買うでも借りるでもいいから、一緒に暮らしてみなくちゃ」と。芸術家の家族ならではの審美眼を持ち、海外で育ったその人の言葉には重みがありました。作品を自分の身近に飾っておくと、いやがおうにも、毎日、その作品を見ることになります。

そうやってまさに「一緒に暮らしてゆく」と作品の見方が変化していることに、ある日、気付きます。その気づきが大事で、音楽でもなんでも、たくさんの作品を見ることで目は磨かれます。見る目が出来てくる、とでもいいましょうか。アートも同じです。あるとき、作品の描きこみの凄さに驚嘆させられたり、理解し難いと思いこんでいたテーマが自分の悩みと共通していたり、というようなことがわかってくるのです。

アートを飾ると、欧米のビジネスマンとのカジュアルな場面での話題にすることもできます。アーティストの作品の中には現在の日本の問題意識が描かれていることもあり、そうした質問を受けることがあるかもしれません。アーティストはいわば、坑内のカナリア。世の中の閉塞間や危機感といった「空気」を少し先に敏感にキャッチし、作品に忍ばせます。だからこそ、アート作品をオフィスや自宅に飾ることで、感性が磨かれるのです。

オフィスに何を飾るか、自宅に何を置くか、ということで自分自身のセルフプロデュースも可能になりますし、国際派のビジネスマンならば、仕事相手に、何も言わなくても知的な趣味があることが伝わります。一流のスーツ、一流の時計や万年筆、一流のビジネスバッグを普段使いしているあなただからこそ、インテリアをおろそかにしてはならない、と思います。ぜひ現代アートをオフィスや自宅に飾ることに挑戦してみてください。