今日の消費者は、情報が豊富で、この情報を使って市場にも影響を及ぼしている。商品の開発や改善に顧客の参加を促し、彼らの声を「価値」に変えるには企業側にはどんな戦略が必要なのか。

ゼネラル・モーターズ(GM)の車載通信システム「オンスター」は、1996年に発売されたときには今日の姿とはずいぶん違うものだった。取り付けはディーラーが行い、サービスを利用するためには、買い手は自身のモバイル・アカウントを取得しなければならなかった。しかし、ディーラーから、このやり方はきわめて面倒で、販売の足を引っ張っているという報告を受けると、GMはGEI(現ベライゾン)と提携して、オンスターをパッケージ化し、工場で取り付けることにした。

一方、消費者には、オンスターで詳細なエンジン診断情報を提供するというGMの計画は不評だった。消費者はエンジン・トラブルについて事細かに知りたいわけではなく、緊急修理が必要なのか、普通に予約を入れて調べてもらえばよい問題なのかを知りたいだけだからだ。この点を考慮してGMはオンスターの診断機能を顧客にとってより使い勝手のよいものに改良した。

オンスターの進化は、GMがディーラーとドライバーという、彼らの顧客の参加を積極的に受け入れてきたことを示している。『価値共創の未来へ―顧客と企業のCo-Creation』(2004年)の著者、C・K・プラハラードとベンカト・ラマスワミによれば、多くの企業はこの戦略を軽視している。顧客の参加を積極的に求めようとしない企業は、不利な立場に立つことになるだろう。今日では、「何が価値か」という定義は、企業ではなく顧客が主導するようになってきているからだ。今日の消費者は、事実上どんな製品についても、必要な情報をほとんど瞬時に手にすることができる。そのうえ、この情報を使って、個人として、また、ネット上のユーザー・コミュニティや評価グループを通じて製品開発に影響を及ぼしている。

製品やサービスではなく、イベントや経験が価値を創造(あるいは破壊)するということを、企業は理解しなければならないと、プラハラードとラマスワミは述べている。

顧客と価値を共創するために、企業はどのような態勢に変わらなくてはならないのか。まず、変革に必要な次の3つの戦略を、どれ1つとして欠かせないものと認識することからスタートしていただきたい。