GDPのためなんかだけじゃ働けない

そんな私が終わりにならない理由は、今年20歳になる娘の存在です。大学生になって、サマーインターンではじめて働く経験をし、周りに「うちのママはずっとお仕事頑張ってきたんだよ」とちょっと自慢げに話しているようです。ママとしては落第だったけれど、ビジネス社会において、私は彼女の世界一のコーチになれます。娘への罪悪感にさいなまれつつも仕事優先に走りぬいた20年。今、娘に認められることで自分を許し、ようやく間違いのない人生だったと思えるようになりました。20年の歳月を要しました。

働く女性、母親が増えることはGDPを成長させること。それもひとつ。日本の労働力不足を解決する、それもその通り。ですが、「GDPを伸ばすために女性を活用する」だけでは、女性はくじけてしまいます。そんな指標なんて、悲しむ子供を前にどうでもよくなってしまう。なによりも最大の未来のGDPは、次世代を担う子ども達です。働く母親が増えることが、今の子ども達にどういう影響を与え、そしてその子ども達がどういう大人になることを選択をするのか。

女性の社会進出を応援するためにはもっと子どもの視線での議論というのも必要なのかと思っています。

私のライフワーク、通信

通信業が私のライフワークだと思うのは、このテクノロジーの進化こそが女性解放だと思うからです。

女性、そして人類の解放ですよね。

私の仕事道具:電話会議システム。国内外のどこにいてもミーティングに参加できる。

通信=テレコミュニケーションの「テレ」とはギリシャ語で遠隔のことで、語源は遠隔通信なんです。我々は遠隔通信を可能にしている世界のライフライン業なんです。たとえばBTのテクノロジーを使えば、テレビ(電話)会議システムで、子どもの体調がすぐれない日は家にいながら会議に参加できます。また託児所の子どもと仕事場にいるママをいつでもテレビでつなげることもできるテレコミュニケーションは、ドラえもんのどこでもドア。つまり子どもか仕事かみたいな選択じゃなくて、両方だけど、どっちに実際の身体があったほうがいいかという選択になるんです。

我々のコーポレートミッションは“Connecting for a better future.”。

世界の国々、人々、文化、マーケットをつなぐこのライフライン業に、最高のロマンを感じながらやっています。勝手し放題の人生懺悔の念をこめ、ドラえもんのどこでもドアで、日本、働く女性たち、子ども達を輝ける未来へとつなげていきたいと思います。

大下明文=構成 向井 渉=撮影