必死の人口減少対策

ところで、なぜ地方自治体が、ホストや美魔女、あるいは地元の市長や小学校、結婚相談サービスの協力を仰いでまで、婚活に乗り出すのでしょう?

それは、先の兵庫県加西市の例を見れば、一目瞭然です。

同市は少子高齢化対策として「5万人都市の再生」を政策課題に掲げ、流通大手イオングループの商業施設(イオンモール加西北条)と連携。

男女の出会いの場作りはもちろん、婚約したカップルには“新居の見学会”まで世話するなど、婚約・結婚後の「市への定住」を強く呼びかけています。

それはひとえに、同市の人口が06年度に5万人を割って以降、ずっと減少傾向にあるから。

つまり、婚活→交際→婚約→結婚となってカップルがその土地に住んでくれれば、その地の人口は一気に2人増える。

さらにその先、1人、2人と子どもを産んでくれれば、若い世代がどんどん増えていく。その効果は、人口減少に悩む自治体にとって、予想以上に大きいもの。

先日も、ある20代女性(A町出身)が隣り町のB町在住男性と結婚が決まり、「どちらの町に住むか」となった際、A町とB町で2人の“取り合い”になった、との話を聞きました。どちらの自治体も「わが町に!」とカップルに猛烈にアプローチを繰り返し、夫婦を必死で呼び込もうとした、というのです。

牛窪 恵
1968年、東京都生まれ。大手出版社勤務ののち、フリーライターとして独立。2001年、マーケティング会社インフィニティを設立。定量的なリサーチとインタビュー取材を徹底的に行い、数々の流行キーワードを世に広める。『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)など著書を多数執筆する一方で、雑誌やテレビでも活躍。10月末『大人が知らない「さとり世代」の消費とホンネ』(PHP研究所)が発売。12月5日『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)が発売に。財務省財政制度等審議会専門委員。