若い世代にも「老後心配性」は多い。しかし、実態がわからないものに不安になるのはナンセンスである。その正体を見据えながら今できることを考えてみよう。
財源が危機的状況にあるのは医療・介護の分野も同じだ。「諸悪の根源は年金と同じく賦課方式と少子高齢化にある」と社会保障論が専門の学習院大学・鈴木亘教授は指摘する。賦課方式が続く限り、少子高齢化によって現役世代が減るほど財源が逼迫するという構造的な問題は解決されない。図8にある通り、リタイヤ世代と現役世代との間には、医療保険、介護保険ともに不公平が拡大しているのだ。
年金はともかく、医療と介護に関しては高齢者も保険料を負担しているという見方もあるが、保険料の多くの部分を負担しているのは現役世代だ。それでも保険料だけではまかなえず、公費という名の現役世代が支払った税金が多く投入されている。公費負担の割合は年金で言えば基礎年金財源の半分、医療保険では後期高齢者医療制度、国民健康保険、共済健保の給付財源の半分、介護保険では6割近く、雇用保険でさえも13.75%となっている。社会保障制度全体で見ると約3割にも達する状況だ。
これを踏まえ、本来なら保険料で運営されるべき社会保険に「莫大な公費が安易に投じられている」と鈴木教授は批判する。安易な公費の投入は国民の社会保障制度に対する「コスト感覚」を失わせ、保険料や自己負担は増やしたくないが社会保障は充実してほしいという“わがまま”を許すことになる。
少子高齢化に伴い、今後一層危機的な状況を迎えるのは介護保険だろう。年金や医療費は高齢者の数に比例して増えていくイメージだが、介護は違う。60歳、70歳で要介護状態になる人は少ないが、85歳では半数以上の人が介護が必要になる。つまり「介護年齢には一種の閾値(いきち)があって、そこを越えると一気に増える」(鈴木教授)のである。