大手商社で働く若手社員の昼神は、上司の北見課長のパワハラに遭い、「仏の鳥羽」と呼ばれる鳥羽課長のチームに異動になった。異動した途端に功績をあげ始めた昼神の様子を見て気分を害した北見課長は、帰宅後、妻に当たり散らしていた――。(第2回/全3回)

※本稿は、龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。 

チームが変わって活躍するようになった新人

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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)
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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)
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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)
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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)

 

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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)

異動した途端に手柄…気に入らん!

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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)
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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)

 

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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)
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龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA)

職場と家庭は関係している

「働き方改革」が叫ばれて久しいですが、僕は、「変わりたい」と願うモラハラ・DV加害者のための当事者団体GADHA(ガドハ)を運営して、いかに職場が家庭と関係しているのかを実感しました。

職場が抑圧的な環境だと、働いている人は深く傷つきながら、それでも生きるために仕事をすることになります。

そのストレスが溜まって余裕がなくなると、自分の思い通りでないことが起きた際に簡単に腹を立てて家庭で爆発してしまうとDV加害者はよく言います。

これは、「職場では我慢しているのだから、家庭は自分の思い通りであるべきだ」という甘えが背景にあります。

職場では上司に忖度そんたくしたり取引先に気を遣っている側だからこそ、家庭ではそれをされる側になりたい、わかってほしいという甘えです。

そのような人ほど、家庭でニーズ(してほしいこと)を共有されたりケアを依頼されると「わがまま」だと思ってしまいます。実際には自分のニーズだけを周りが尊重すべきだと思っている点で、「わがまま」なのは自分なのですが、その自覚が難しいのです。

こうした背景自体は加害者の責任を免ずるものではありません。それでもやはり、この加害的な社会や職場自体が、家庭の安寧を妨げている側面はあります。

職場でボロボロになり家庭をボロボロにして一人に…

ただ、そのような大きな社会問題や構造をよくしようとしても、ミクロな人間関係の問題はすぐに解決できません。大切な人を大切にして生きていきたいのであれば、そのようなストレスがあろうと、余裕がなかろうと、なんとかケアを始めていく必要があります。

実際にパートナーとの別居や離婚という事態に陥った場合に、「もう働く意義もない」といって仕事を辞める人や、病気になる人、自死を選ぶ人がいます。「こんなことになるくらいなら、もっと家庭を大切にしたらよかった」と嘆く人は本当にたくさんいます。

そうすると、一体何のためにそれほど身を粉にして働いていたのでしょうか。

職場でボロボロになり、家庭もボロボロにして、最後には一人になってしまう。

こんなに悲劇的な結末はありません。

結局のところ、人はお金を稼ぐために生きているのではないのだと思います。お金は目的ではなく手段です。生きる目的とは、自他共に持続可能な形で、美徳を発揮して、ケアしあえる関係、すなわち幸福を生きることです。

これはパートナーシップや親子関係に限った話ではありません。職場の関係も、友人関係も、趣味のつながりもそうです。

働き方改革の本質は、単に職場の改善にとどまるものではなく、人の人生、命に関わることなのだと思います。

大切な関係を大切にできるためには、職場が命の全てを消耗するような場であってはなりません。

職場での自分の加害性を認める

働き方改革と聞くと絵空事や綺麗事のように感じるかもしれません。しかし、働きやすい職場を作っていかなければ、現実が苦しくなり続けていきます。ボロボロになるまで働いて、自分も周りも傷つけて、孤独になるために仕事をしている人などいません。

今いる職場の文化や制度を変えるのは本当に大変です。どうしても難しい場合は転職も視野に入れる必要もあるかもしれません。自分1人でできることには限界があります。上司・同僚・部下・取引先・顧客など、家庭やパートナーシップと比べて関係者も多いです。

この問題に向き合うために、僕は「変わりたい」と願う職場での加害者のためのCoNeCa(コネカ)という自助団体も立ち上げました。

実は、職場での自分の加害性を認めることができる人は少なくありません。GADHAに参加している人の中には、元々はパートナーとの関係を課題に感じて参加したものの、職場での問題に気づく人もたくさんいます。

NG例は学ぶがOK例がわからない

その方々が異口同音に言うのは「これはハラスメント、これはダメ」とNGなことは研修などでも学ぶけれども「ではどうしたらいいのか、どう関わったらいいのかは学べない」ということです。本人がマネジメントされる側だった時に、NG例のような接し方をされてきた人が多く、ロールモデルがないのです。

龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA) 
龍たまこ・中川瑛『99%離婚 離婚した毒父は変われるか』(KADOKAWA) 

また、ミクロな個人的なレベルでケアを心がけても、職場の上司や目標設定などが過酷で、どうしてもケアをするのが難しいということもあります。利益率の高いビジネスモデルの構築や、組織としての目標設計の検討となってくると、あまりにも話が大きくなってしまって、なんだか働く一社員としては現実感がないと感じてしまう人もいるでしょう。

CoNeCaでは、大きく2つのことを大切にしています。1つは「何がダメかではなくて、何がいい関わりなのか」を学ぶこと。2つ目は「どうしようもない状況で、愚痴や弱音を吐きつつ、できることをやっていくこと」です。

理想を言い始めたらキリがありませんし、現実的には色々なしがらみがあって難しいこと、できないこともあります。

それでも、理想がわからなければそもそも努力しようがありません。それに、「仕方がない」「どうしようもない」から不幸になりたいかと言えば、そんなことはないはずです。

自他をケアする余裕を作る

職場をよくすることがゴールではありません。幸せに生きるために、自他をケアする余裕を作っていくことがゴールです。職場がケアしあえる場所になれば、それは本当に素晴らしいことです。

CoNeCaには男女を問わず、年齢もさまざま、企業での役割やポジションも多様な人が参加しています。

ケアリングリーダーシップやマネジメントを学ぶことを通じてチームの関係性がよくなった方や、辞めてしまいそうだったメンバーの話をしっかり聞くことを通じて今では元気に活躍してもらえるようになったという方もいます。

いつでもどんな場面でも、できることはあると信じています。